葬儀や法事において、行われている焼香。仏教だけではなく、キリスト教でも焼香をする。お香の起源は非常に古く、紀元前3000年前のメソポタミア文明では、既に香木の取引に関する文献があり、ほぼ同時代の古代エジプトではお香だけではなく、香水まで作られていたとされる。日本ではどうかというと、仏教の伝来と同時にもたらされたとされている。今回は、お香について触れてみたい。
遺体の腐臭を隠すために始まった焼香
仏教とお香は密接に関わっている。仏教の発祥地であるインドは高温であるため、亡くなった人の遺体は直ぐに腐敗が始まる為に強い腐臭を発する。この腐臭を隠すためにお香を焚くようになったようだ。また、お香を焚くことによって発生する煙に不浄を払う効果があるとされ、お香の臭いを嗅ぐことによる癒し効果もある。様々な経典にもお香に関する記述は多く、お香を焚くことは亡くなった人に対する供養の基本となっている。インドは伽羅や白檀といった香木の主要な産地でもあるため、お香が発展していくのはある意味必然でもあったのであろう。
一方キリスト教では徐々に廃れつつあるお香
キリスト教ではどうかというと、ギリシャ正教では礼拝の際に振り香炉が使用されていて、カトリック教会ではしばしば使用されているが、使用頻度は減少しているらしい。意義は、お香を焚いた際に発生する煙が天に登るように、自己の祈りが天に届くことを祈願することらしい。
仏事とは無関係に流行しているお香
最近ではアロマテラピーがブームとなっていて、お香に関する話題も多く世間の関心も高い。確かにお香の浄化作用については、筆者も聞いたことがある。
神社仏閣においてお香を焚くのは、神聖な場所を浄化することが目的であり、自宅においても玄関やトイレといった重要な場所でお香を焚くと浄化の効果が高く、幸運がもたらされることになるとか。幸運については置いておくとして、香りによって得られる精神的な癒しの効果については、筆者も経験したことがあるので理解できた。そこで色々調べてみたのだが、香木や香りの元となっている原料によっては、もたらされる効果が違っているのは良いとして、自分にとって好きな香りを嗅いだ方がより精神的効果が高いのではないだろうかと考える。
オリジナルのお香が作れるサービスも登場
更に調べてみると、オリジナル香として自分の好きな原料を用いて、お香が作れるサービスがあることを見つけた。案外普段の生活だけではなく、これを終活に生かすことができれば、きっと面白いことに繋がる気がしてきた。死に臨んで、自分だけが癒されるのではなく、残された人達も同時に癒される。そんな最後を迎えるべく、お香を役立てることも一興かもしれない。