あまり表立って取り上げられる機会は少ないが、先進国では亡骸の処理は決してエコではない。人口が多く土地も狭い我が国では亡くなった方の98%以上が火葬される。電気にせよ、灯油にせよ、火葬には多くのエネルギーを使わざるを得ない。それは、衛生上の問題や狭い国土の問題をクリアするために必要なことだ。しかし、有機物を燃焼すると排出されるダイオキシンが多かれ少なかれ大気中に放出されることを知る人は多くないのではないだろうか。
「火葬する」ということ自体がダイオキシンを排出する
ダイオキシン排出軽減のためにプラスチックなどを一緒に焼かないといったルールが徹底されてきていいるが、そもそも塵芥にしろ、棺にしろ、亡骸にしろ有機物を燃やすことによるダイオキシン生成は避けられないのだ。そのため、新しい斎場ではダイオキシン吸着のための触媒装置を導入するようになっている。
立派なヒノキの棺を使用して火葬するのは果たしてエコと言えるだろうか…
立派な棺が故人や残された一族のステータスシンボルであり、今でも総ヒノキ製で手彫りの彫刻を施した百万円を超える棺を扱う葬儀社もある。しかし、最終的には燃されて灰になってしまうものだ。前述のように、燃やすと多かれ少なかれダイオキシンの排出源となることは避けられない。それだけではなく、資源を有効に使うという観点から、数十年、あるいは百年近くかけて育てたヒノキを一瞬のうちに燃すために使うことは環境倫理的には望ましくないのではないか?さらに、材質が密で重い棺は、それだけ燃やすのにエネルギーが必要なので、なおさらエコではない。実は、そのような考え方に基づいて、エコな棺の制作をしている会社がいくつかある。このような流れは、日本だけでなく海外でも同じような発想で同時発生的に始まっているようだ。
材木として使用するまでに必要な期間は決して短くない
誰でも知っているように、樹木は材木をとれる大きさに育つのに時間がかかる。例えば、成長の速い桐や柳でも数年から十数年は育てないと、材木として利用しにくい。天然資源の再生速度に合うような利用をしていかなければ、持続可能な資源利用は成り立たない。エコな棺を指向している製作者たちの基本的な考え方は、成長の早い植物で作成することである。こうすることで軽量化し、二酸化炭素やその他の汚染物質の大気中への放出を軽減できる。例えば、籐や柳の細枝で編んだバスケットのような棺なのだが、種類は多く、ネット上にいくつか画像が紹介されている。個人的には、なんともかわいらしくて素敵だと思った。
生前に棚として使用し、火葬時に棺に組み替える商品がある
エコな生活を考えるアメリカの「インハビタット」というサイトでは、「シェルフ・フォー・ライフ」(一生使える棚)が紹介されている。作り方のイラスト付きである。存命中は本や小物をディスプレイする棚として利用し、亡くなったら組み替えて棺にできるという優れものだ。使っている間に、板が反ってしまってうまく棺にならなかったらどうするのだろうとか、ちょっと心配してしまったが、発想としては面白い。
エコな逝き方を考えるのも終活の一つ
自分自身が亡くなったあとのことを、色々と考え始めていらっしゃる方も多いだろう。相続のこと、葬儀のあり方、お墓のこと、家族に伝えておきたいこと…。エンディングノートなどに、すでにしたためている方もいるだろう。できる限り「エコな逝き方」も、模索していただければ、残された家族だけでなく生きとし生けるものすべてにとってプラスになるに違いない。