終活を始めるにあたり相続税について調べ始めると、必ずと言っていい程幾つかの壁に突き当たる。その内、最も大きな壁となるのは相続時精算課税制度ではないだろうか。
言葉も複雑ならば、制度自体も複雑で簡単には理解できない。だが、この制度は使い方によっては、贈与税の節税対策として非常に有効な制度となり得る。
なんといっても一番のメリットは2500万円まで贈与税が非課税!
当該制度について簡単に説明する。
(1)父母・祖父母(1月1日時点で満60歳以上)から、子・孫(1月1日時点で満20歳以上)が贈与を受けた場合、最高で2500万円まで贈与税が非課税となる。
(2)贈与後相続が発生した場合、贈与された財産を相続財産に加算して相続税を計算する。
以上ではあるが、当該制度の目的は高齢者のタンス預金を子や孫に移転させ、結果的に消費を促進させる経済政策の一環なのである。消費は兎も角、相続税よりも贈与税の税率が高く、かつ、基礎控除額も相続税の方が高額であるため、贈与税の節税対策として利点が多いと判断できる面もある。
通常だと贈与税の基礎控除額は、年間110万円までであるが、当該制度だと2500万円まで非課税というのは確かに魅力があるのかもしれない。
更に2500万円を超えた場合でも税率が20%と、通常の半分以下で済む
更に、税率の面で見ると分かり易い。
当該制度の適用を受けた場合、2500万円までは贈与税は非課税だ。2500万円を超えた部分の税率は20%となる。では、当該制度の適用を受けない場合はと言えば、110万円の非課税額を超えた部分の税率は、45~50%の税率となるのだ。単純計算で、贈与税額が倍以上になってしまう。
不動産等の高額財産を多く所有している方には、無視できない制度ではないだろうか。
しかし一度適用してしまうと、二度と戻すことができない。また贈与税は非課税でも相続税にはしっかり課税される
ただ、税務署はそんなに甘くはない。
当該制度には幾つかのデメリットが存在する。最も留意して欲しいのが、一度適用を受けると二度と戻せないということだ。適用後に「利点が無いから止めた」は通用しない。
次に、当然ではあるが贈与税の節税対策としては有効であっても、相続税は確り課税されるということ。ただし、既に納税された贈与税については控除されるが、相続税は減免されないのだ。
メリットとデメリットが混在する相続時精算課税制度が自分に得かどうかはしっかり専門家と話し合うべき
他にもあるが、詳細は省略する。当該制度の適用を受けるか受けないかについては、やはり税理士と相談してから決めるべきだ。
特に、相続財産並びに相続人達の状況によっては、適用を受けない方が有利となる場合もある。また、他の制度(住宅取得資金の非課税制度等)と併用すれば、更に有利となる場合もあり、臨機応変に対応しなければならない。
自分達にとって、何が一番有利で状況に適しているかを判断しつつ、専門家と協力して対策していけば、必ず満足のいく終活に繋がるはずである。