日本人横綱『稀勢の里』誕生。しかしそれまで角界を支えてきたのは外国人力士、特にモンゴル勢だといっても過言ではないしょう。彼らは顔立ちも私たちとよく似ていて、特に赤ちゃんのお尻にある青い痣のようなものはモンゴルの古い言い方を取った蒙古斑と呼ばれ、まるで親戚のような親しみを感じさせる人々です。
モンゴルでの葬儀は風葬、火葬、土葬の3種類
彼らの故郷は、広々とした大草原。今は少しずつ定住しているようですが、元々『パオ』というテントに住み、四季折々その季節に応じた場所を求めヒツジやヤギ、ラクダや馬などの家畜と共に移動して暮らす遊牧民です。木はとても少なく、燃料は家畜の糞を乾かして使っています。
旅に生きるモンゴルの人々は、また私たちと同じ仏教徒でもあります。日本人より仏教の原点に近いチベット仏教の影響を受け輪廻転生を強く信じているそうです。モンゴルのお葬式のやり方は3種類あり『風葬』『火葬』『土葬』です。その中で広く用いられているのは風葬で、私達にはなじみが薄いのでご紹介します。
遺体をラクダか馬車に乗せ、落ちたところが風葬の場所となる
死者が出るとラマ僧が呼ばれ、お経をあげます。そして『死後の整骨』をする人を指名します。それは遺体を整えたり葬送に送り出したり遺体をお世話する人で、死者と干支の合う人を僧が選びます。モンゴルでは干支を大事に考えるそうです。
家族は死者に触れたり同じ部屋にいることを許されず、別のパオや部屋に移り、そこで弔問を受けます。遺体は3日ほど安置されてから、お経の書いてある布でくるまれ通常の出口以外から出され、ラクダか馬車に乗せられます。遺体は緩く固定され、途中で落ちたところで放置されます。墓所と決まった場所があるところもあるようですが、その場合も遺体が落ちたらそこが最後の場所になります。
遺体はそのまま放置し、数日後に遺骨になっているかどうかを確認する
場所が定まると遺体を正しい方法で整えて土の上に放置し、そのまま後を振り向かずに帰ります。その後数日たって遺体を確認しに行きます。野性動物や鳥などによって遺体がきれいに無くなっていれば故人は成仏したと思われるそうです。食べられていなければ場所を変えることもあるそうです。遺骨はそのまま放置され、回収されることはありません。葬送終了後、乳製品などの食物が会葬者に配られます。
身体を動物に与えるという考え方
草原の葬送、初めて聞いたときは驚きました。特に野生の動物に遺体の処理を任せることに衝撃を受けました。しかし考えてみると日本でも昔はお葬式のことを『野辺送り』と呼んでいましたし、法隆寺の玉虫厨子の模様には飢えた母虎にわが身を与える釈迦の姿が描かれています。身を動物に与える事は原始仏教では大切な喜捨なのでしょう。また遊牧民族である彼らには動物は私達よりもっと身近な存在だと思いましすし、あちこち転々として生活する彼らにはこれが一番合理的なやり方なのかもしれません。
地域や宗教によって異なる文化や風習
常識だと思っていることが、別の地域ではそうではない。頭では分かっていてもなかなか納得できるものではありません。
しかしそれを大切にしているよく似た人々を思うと、人の不思議さと世界の大きさを実感させられたのでした。