相続税の節税対策として一般的なのは、生前贈与やアパート等を建設する不動産投資が挙げられる。生前贈与は兎も角、不動産投資には必ずリスクが伴い、一歩間違えると節税対策どころか、財産そのものが目減りしてしまうことにもなりかねない。故に慎重な検討が必要になってくる。しかし、中・長期的な見方をしてみると、結構お勧めできる安定した節税対策があるのだ。それは一体何だろうか。
金の価値は不変
結論から言うと、「金」である。説明するまでもないが、古代から価値のあるものとされており、硬貨にせずとも金自体が世界中で貨幣として通用する。腐食も陳腐化も無縁であり、株式等の有価証券や土地等の不動産のように相場価格が大幅に下落することも無い。
筆者の学生時代に、中東某国からの留学生と話す機会があった。彼は、ブランド物とか高級腕時計や高級車には一切興味が無く、金地金を強く信奉すると言っていた。理由を聞くと、紛争状態が長く続いた土地柄から、自国の通貨(貨幣)が信用できず、何時紛争に巻き込まれ自分の住む家や土地を追い出されるか分からない。故に、持ち運びが楽でどの土地や国へ行っても、貨幣として通用する金地金を持っていれば、当座の生活に困ることは無いからだ。と、言っていた。それを聞いた筆者は、非常に感銘を受けたことを覚えているし、早速貯金の一部を使って金地金と22金のブレスレットを購入し、今現在も金庫に仕舞ってある。
状況が悪化すればするほど価値があがる
では、金の何が相続税の節税対策なのかと言うと、中・長期間(5~10年以上)を目途として金を保有することにより政治的、経済的状況の変化に対するリスクを分散するためなのだ。
日本国内が紛争状態となり、現金が無価値になる状況も可能性が無いとは言い切れない。だが、金ならば政治的、経済的な原因で価値が下落することは殆ど有り得ず、むしろ価値が上がることが見込まれる。ただ、価値が上がることについては、あくまでも副次的なもので、本来の節税対策としての目的はリスク分散にあるものとご理解頂きたい。
購入の際の業者選定は慎重に
ポイントとしては、金地金を実績のある信頼できる業者から購入することだ。それ以外だと、純金積立がある。何れにせよ、資金に余裕がある場合において、一定量を一括購入するのではなく、分割で購入すれば良いだろう。
理由は、金そのものの相場対策となるからだ。特に金地金の国際相場が高騰している最近の状況だと、一括購入は避けた方が無難だ。更に、一番の問題となるのは業者の選定だが、インターネット以外にも信託銀行等でも情報の収集は可能だ。短時間での効を焦らず、長い目を以って事に臨んで、有効な節税対策を練っていって欲しい。