今注目の葬儀業界。しかしながら葬儀単価の下落傾向や新規参入組の猛威などが絡まって市場は混戦状態にあるようです。
とは言え、業界の存在感の増大と合わせて社会に対する影響力もまた大きくなっていくと言えるでしょう。
講演会やセミナー等を企画して他社と差別化を図る
こうした中、「命の大切さ」などのテーマで無料の講演会を開くなど、ユニークな企画を打ち出す葬儀会社も出ているようです。生き残りをかけて他社との差別化を図ろうとの意図も多少は有るのかもしれませんが、私個人と致しましては、企業によるこうした活動は大いに歓迎したい処です。依然として自殺者が絶えないという国内事情を考えますと、むしろ宗教関係者なども交えて公開シンポジウムを開催してはどうかと提案したいくらいです。
ちなみに業界のこうした話題を追い掛けていると、何故か私の脳裏に「企業メセナ」という言葉が浮かんでしまいました。御存じの方も多いと思われますが、企業メセナとは簡単に言えば、文化・芸術の振興を企業が資金面で支援する事です。欧米では1960年代から既に始まっているらしいですが、日本では1988年に開催された日仏文化サミットを機に活動が浸透し出したとされています。
かつて大混戦だった金融業界はどうだったかというと…
1988年と言えば、バブル経済の最盛期。僭越ながら私はこのころ、ある金融機関のサラリーマンとして東京で働いておりました。昼休みともなれば、何処かでランチでもと外のオフィス街を歩いていると、瀟洒なビル群の谷間からクラシック音楽の野外演奏が聞こえて来るではありませんか。随分と旺盛なサービス精神だなと感服しながらも、耳にする音楽と辺り一帯のシーンは何処か日本の経済的繁栄を謳歌しているかのようでした。
金融業界のみに着目しての話ですが、今となっては隔世の感があります。何せバブルのころ、世界を舞台に肩で風を切っていた都市銀行、そして金融債を発行していた長期信用銀行などで、今も当時のままの行名で存在する銀行は一つも無いのですから。本当にこの非情とも言えそうな現実を前にして唖然としてしまいます。
さて今後、葬儀業界はどうなるのだろうか
話を葬儀業界に戻します。こうしたコラムを書く人間として単刀直入に言わせて頂きますと、今注目の葬儀業界に同じ轍を踏んで欲しくない訳です。確かにバブル当時の金融業界とは事情や取り巻く環境は違うかもしれません。過度に悲観しているのかもしれません・・・。
金融業界がそうであったように、以前ほど大規模な葬儀が必要なくなったことで大きな箱物(葬儀式場)が負担となり、経営難に陥りがちな大手互助会同士の統廃合、中小同士の合併なども取り沙汰され始めているようです。バブル経済とその後を経験した人間として、どうしてもこうしたニュースにひやりとし、敏感にならざるを得ません。葬儀業界の健全な成長と発展を皆で見守っていきたいものです。
「栄光は移ろいやすいもの」とは、先人の格言です。