祭壇とは、葬儀で遺影や供物を飾り、故人を偲び供養する壇のことです。
かつては葬儀場の中央に三段や五段造りの「白木祭壇」が安置されているのが、一般のお葬式のイメージでした。
資料によっては「もともと、土葬をしていた時代に、棺を白木の輿に入れて皆で担いで野辺送りをしたことに由来する伝統的なものです」などと書いてあることもありますが、これは完全な俗説で、実際には戦後の高度経済成長期に葬儀がやたらと派手になっていたころの名残りだというのが真相です。
威厳のある白木祭壇
白木祭壇は使い回しが効いて安上がりだということで流行したものなのですが、実際に葬儀で白木祭壇を借りると数十万円にもなります。ときに白木祭壇は、葬儀費用の不透明さの象徴のようにいわれることもあるほどです。(葬儀で一番費用のかかる葬儀社の人件費がこの部分に含まれていることが、使い回しなのに高額になることの主な原因なのですが、意図的に割高な料金設定をしている葬儀社の存在も無視できません)
白木祭壇がどこか威圧的な雰囲気を持っているのに対して、見た目がきれいで親しみやすいということで近年増えているのが「花祭壇(生花祭壇)」です。
流行の生花祭壇
生花祭壇は、祭壇を立体的に見せるために美しい曲線を描かせるのが特徴です。
上段の遺影を中心にして左右対称に台を設置し、その上に吸水スポンジ製の花を挿すフォームを載せていくことで組み立てられます。花や観葉植物の高さや向き、色のバランスに配慮しながら一本一本を手で挿して仕上げていきます。
生花祭壇にはとくに決まりごとがなく、自由にデザインできるところが魅力です。
故人が好きだった花などをアレンジして、ひとつの葬儀ごとに全く新しい祭壇を作っていくのが生花祭壇のプロの技の見せどころでもあるようです。
花の品質の判断、花を挿す手際、祭壇の見映えをよくするデザイン力など、一人前になるための技術を習得するには5年以上かかるとされています。
生花祭壇では、納棺のときに祭壇の花を柩の中に入れることができます。花に囲まれた故人を送り出すという方式は、生花祭壇が徐々に好まれるようになってきたことの理由のひとつでしょう。
生花祭壇の料金は花の種類や量によって当然変わってきますが、需要そのものの高まりにともなって、低価格で提供する葬儀社が増えてきました。参列者の供花を祭壇に組み込むプランもあります。(生花祭壇に使われた花は、葬儀の参列者に分配して持ち帰ってもらうことが多く、葬儀後に廃棄されてしまうものではありません)
生花祭壇と白木祭壇、どちらを選びますか?
わが国で葬送の自由化・個性化が提唱されるようになって久しく経ちますが、現代の葬儀では、厳粛なイメージのある白木祭壇か、費用的に納得感のある生花祭壇にするかの選択ができるようになったわけです。
葬儀を施行する遺族のさまざまない意向を、より現実的な「形」にして供与していくことは、時代の要求をそのまま反映した流れでもあるように思われます。