葬儀の際のアクセサリーといえば、パールが思い浮かびます。
黒い喪服の胸元を飾るものといえば、一連のパールネックレスといってもよいでしょう。
喪服にパールは、割りと最近始まった風習
この習慣がいつから始まったのかというと、「現在のエリザベス女王がチャーチルの葬儀の際に真珠を着用し、上流階級の婦人がそれにならった」のがきっかけだと言われています。だとすると1965年1月30日のことです。わりと最近の風習なのですね。
筆者にとってパールといえば、シャネルのイメージでした。
シャネルスーツに、パールネックレスを垂らし、筒型ハンドバックで颯爽と歩く、ゴージャスかつ〝仕事のできる女″のイメージです。
そして十代二十代の若い頃には、自分にはエレガントすぎる宝飾品で、「パールなんて柄ではないと思っておりました。
当時参列した葬式では、アクセサリーなど何も着けませんでした。
しかし、四十歳を過ぎた頃から、パールの良さがわかるようになりました。
海からの贈り物 「真珠」
数ある宝飾品の中でも、真珠は他の宝石や金銀とは違い、海からできた物だという点に思うところがあったからです。
鉱物であるダイヤモンド等の石とは違い、研磨やカットが必要なく、貝が体内ではぐくんだまるい珠の形、まろやかに輝く色艶そのものが美しさの源だと気付いたからです。
人工的な輝きというより自然の光沢ですね。ダイヤモンドをはじめとする宝石の美しさが、シャープに輝くきらめきであるのに比べ、真珠の美しさはまろみを帯びた色艶です。
貝が体内の異物に苦しんで包み込んだ真珠の光沢は、海の涙と言われる、ほのかな哀しさも秘めています。「月のしずく」「人魚の涙」といわれてきた神秘性も、葬儀の席に許される趣きがあると思います。
和装の場合は帯や帯留め、襟の合わせなども着こなしのうちですので、着物のみで完成する美しさがありますが、洋装の場合は、帽子、宝飾品なども含めた上でのコーディネートです。黒一色に真珠の白が加わると、黒い喪服の悲しみがいっそう引き立つ気がします。
冠婚葬祭にはパールネックレス
筆者はちょっと気の張る席には小振りパールピアスとネックレスを愛用しています。
パールさえあればいつでも大丈夫――というのが、最近の心情です。パールは、喜びも悲しみも噛みしめて生きていく、大人の女にぴったりの装飾品だと思っています。
年を重ねたことでパールの熟成された輝きにも負けずに、臆せず着けられるようになったのかもしれません。どんな場面、どんな席でも大丈夫。立派に耐えてみせます――美しい珠をつなげたパールネックレスを見ると、そんな思いが沸いてきます。