中国の古典経典・四書五経。その五経典の中に「儀礼」という経典がある。古代中国の官吏階級の通過儀礼、婚礼・階礼・喪礼・外交儀礼などを細かく規定したものである。儀礼の「士喪礼編」は、士の階級にあるものが、その両親を葬る際の儀礼を扱っている。内容は死者の魂を呼び戻す儀礼にはじまり、埋葬のあとの賡祭、つまり魂を案ずる祭りまでが記載されている。
儀礼に書かれた具体的な儀式とは
始めに死者に布団を掛け、来ていた服を脱がせる。口にさじを噛ませ、ひじ掛けで両足をはさみ、足が曲がるのを防ぐ。そして、干した肉と塩辛と酒を死者の右側に供え、堂にカーテンを垂らして中を隠す。この一連の行為は、死者の肉体を大切に扱うことと、魂に仕えるという意味合いがある。
複者と呼ばれる、魂招きをする者は死者の礼服を左肩にかけて屋根に昇り、北を向いて立ち、衣服を振りながら死者に「ハーア、(死者の名)。帰り来たれ」3度招く言葉を投げかける。そして、庭に迎い衣服を投げ下ろす。それをかごで受け止め、東の階段から堂に昇り、死者にそれを着せる。招いた服には魂が包まれており、着ることで魂が元に戻ると考えられていた。招魂の儀式が行われても死者が生き返らない事がわかれば、葬送の準備に取り掛かる。葬送儀礼の目的は、死者の体を大切に扱うこと。その魂に使えることである。その後、死亡通知と弔問、死者に衣服を贈る・死に装束の準備など一連の行為が厳かに行われていく。
葬儀の意味
「荀子」礼論篇に、葬儀の意味について述べられている。
喪礼とは、死者に対して生者のように使えるという意味をはっきりと知り、哀戚と恭敬の情を尽くして葬送し、手落ちなく埋葬すること以外にない。従って、埋葬とは、その形態をみ葬ることであり、祭祀とは、その神霊にみ仕えることであり、その銘(死者の名を書いた旗)と(人の死を謹んで生前の徳などを追慕して述べる詞)と繋世とはその名前を敬って後世に伝えることである。生きている人に仕える礼は始めを飾り、死んだ人を送る礼は、終わりを飾る。
礼を尽くすとは
葬儀とは葬と儀に分かれる。埋葬するという行為は“肉体”を敬い、儀を行うことで魂を敬い、銘を刻むことで後世に伝える。総じて死者に対する礼とは終わりに礼を持つことである。
亡き者に対して礼を尽くすことで、魂魄が天地に帰り、神聖な命として再び巡り合うのかもしれない。