ここ数年、お墓に対する意識の変化が起きている。厚生労働省によれば65歳以上の人がいる世帯の内、三世代同居の割合は2016年には11.0%にまで減少し、高齢者の6割弱は夫婦か一人暮らしである。「老後は子供と関係なく暮らす」ということが当たり前である今、お墓に対する考え方に変化が起きるのは当然の事である。そこで、現代の墓事情と最近の供養商品をご紹介する。
墓の問題
親族の付き合いが希薄になった今、遠くにある墓の管理を親戚に任せることが負担になったり、墓守りをする人がいないといった理由から改葬や墓じまいが増えている。また、何年もお参りすらされていない無縁墓の増加問題も発生している。東京では年間の管理料を一定年数滞納し、親族の居場所もわからない墓は撤去しているが、今後増えるだろうこの問題に対し、無縁合同墓地も整備されている。
多用な墓のデザイン
一方で自分の葬儀やお墓について考える人も増え、墓のデザインも多様化している。形もさまざまであり、また全面墓石ではなく、一部がガラスのお墓も販売されている。そして、お墓の表面といえば、〇〇家の墓と書かれていることをイメージするだろうが、家名ではなく、思い思いのメッセージが刻まれた墓石が増えている。例えば、「絆」や「心」と言った単語から、「たくさんの思い出をありがとう」といった感謝のメッセージが刻まれている。和尚さんが心を込めて書き下ろした文字をそのまま刻む商品もあり、パソコンで作られた硬い字体より温かみを感じることができる。ちなみに、これら刻む文字は基本的に自由ではあるが、ヒット曲の歌詞の引用は法的に著作権が絡むので注意したいところである。
最新の供養商品
墓を持たず、遺骨を自宅で保管している場合や、さらに大きな仏壇も置かず手元供養という形で遺骨を一部安置している家庭も多い。そこで気になった最新の手元供養商品をいくつか紹介する。
インテリアとして違和感のない骨壺
Art Grave
骨壺と言えば陶器でできているイメージだが、インテリアに違和感なく溶け込むデザイン性でステンレス容器の骨壺を販売している。高い密閉性があり腐食に強く、陶器やガラスのように割れる心配もないのが特徴である。
遺骨ジュエリー
TOMONI
「大切な故人の面影を身につけ、これからの人生もともに歩んでいく」そんな素敵な思いで作成される遺骨ジュエリーは、ソウルジュエリーとも言われている。微量の遺骨を指輪やペンダントに納めて身につけるタイプのジュエリーは以前からあったが、最近は遺骨から炭素を抽出し加工したダイヤモンドや、抽出したカルシウムを天然サファイヤと融合したブルーサファイアやピンクサファイヤをジュエリーとして身につける商品が販売されている。
持ち運びが可能な仏壇
旅する仏壇
高さ約43mm×横幅210mm×奥行61mmの小さな仏壇の中にはご位牌とお鈴と香炉がおさめられており、その名の通り持ち運びをすることができる。例えば思い出の場所に旅行に行くこともできる。最愛の故人との思い出を共有することができる新しい仏壇の形である。
最後に…
お墓を立てる土地の問題もあり、この先減少し続けるだろう「墓を建てる」ということ。子孫代々でお墓を継承することはもはや当たり前ではない。改葬や墓じまい、無縁墓の問題に対し、これら新しい供養商品が解決に少しでも結びつくことができればと考える。