仏壇にお供えをするときに、あいさつ代わりにおりんを「ち~ん」と鳴らす人は多いだろう。軽くたたくだけで澄んだきれいな音が響くため、年端の行かない子どもでもおりんを鳴らすために仏壇に向かうことがある。だが、おりんは本来仏壇に向かうたびに鳴らすものではないことはご存知だろうか。
おりんはお参りをするための合図ではない
多くの人にとっておりんを鳴らす行為は、仏壇にお参りをするための合図と考えているだろう。しかし、おりんは故人に合図を送る「呼び鈴」ではない。極楽浄土にまで届くと言われているおりんの音に載せ、故人を想う気持ちや祈りを届けるために使うのだ。
毎朝仏壇に仏飯やお茶をお供えするときなどに、供養の気持ちを添えておりんを鳴らすのはよいが、線香をあげるたびにおりんを鳴らす必要はないのだ。
読経の伴奏をする楽器としての役割を持つおりん
邪気を払うといわれる澄んだおりんの音は、素材により音色に違いがあるが基本として「レ」の音が鳴るようにできている。実はこの「レ」の音が出るようになっているのには意味がある。おりんは読経に合わせて鳴らすため、読経の音程やリズムに沿った音になっているのだ。読経の際も鳴らす場所に決まりがあり、好きなタイミングで鳴らすことはない。
つまり、おりんは読経の伴奏をする楽器としての役割を持つ道具といえる。本来おりんは読経の時にのみ使うべき仏具なのだ。日常生活において仏壇に挨拶をするときに「ち~ん」と鳴らす必要はないといえよう。
また読経の途中におりんが鳴ったからといって、合掌する必要もないのだ。おりんは挨拶をせよという合図ではないためだ。
おりんに限らず仏具は宗派によって作法も形も異なる
仏具は宗派により作法や形が異なることがあるが、おりんについても違いがある。もともとは禅宗で使われてきた梵音具(音を出す仏具の総称)で、徐々にさまざまな宗派で使われるようになった。このため、宗派によりおりんの呼び方も形にも違いがある。
もし新たに仏具を購入する場合には、仏具店に自分の宗派にあったものを選ぶようにするとよい。ただ、近年では一見おりんに見えないデザインのものが増えてきている。宗派にこだわりがないのであれば、インテリアや好みに合わせて選んでもよい。
むやみやたらに鳴らすものではないおりんだが、つい鳴らしたくなる音色ではある。おりんを鳴らしたときには、故人を想い一行でもよいのでお経を読むようにするとよいだろう。