相続と終活、密接に関係している両者だが、個別の話として無関係に感じている方も多いものと考える。終活の一つとして近年注目を集めているエンディングノート。このエンディングノートを上手く活用して遺言書を作成する方法がある。最初から遺言書を作成しようとすると、法的に有効か無効かとか、誰に何を残そうかと言うような問題が先走りし、どうしても堅苦しくなってしまって思うように作成できない状況になり易いのではないだろうか。しかし、エンディングノートを活用すれば、行き詰ることもなくスムーズに遺言書を作成できるかもしれない。今回は相続と終活、特にエンディングノートの活用について触れてみたい。
エンディングノートは気軽に書けていつでも修正可能
エンディングノートとは、海外では事前指示とも呼ばれているが、自分の死に備えて生前の希望や死後の処置について記載するノートとされている。また、判断力並びに意思疎通が困難となる病気に罹患した場合に備える側面もあるようだ。高齢者向けとも言われるが、比較的若い世代でも作成する人が増加しつつある。
内容については、これと言った規定はなく自由に書き連ねて問題はない。ここが遺言書との大きな違いであろう。エンディングノート自体は書店や文房具店にて安価で購入可能であり、インターネットで無料にてダウンロード可能なサービスもある。
遺言書の作成は間違えられないからこそお金も時間もかかる
また遺言書とは、広義では自分の死後のために残した言葉や文章であるとされ、狭義では民法第960条他で規定されている自分の死後の法律関係を確定させるための最終意思の表示を記入した書面を言い、民法上の規定に従い作成されたもののみ法的に有効となっている。最近の傾向だと、法的効力が強く信頼性が高い公正証書遺言が注目を集めている。
個人で作成しても良いのだが、その場合だと家庭裁判所において当該遺言書が法的に有効か否かを検認して貰わなくてはならない。手間を考えると、公証人が代理にて作成するために家庭裁判所の検認が必要とされない公正証書遺言が注目を集めているのだろう。前述の遺言書の定義を考えると、エンディングノートは広義では法的に無効な遺言書と解釈することも可能なのかもしれない。
まずはエンディングノートを書いて、自分の意思を整理しよう
では、エンディングノートをどのようにして活用するのかと言うと、エンディングノートを遺言書作成時の基礎として活用すれば良いのだ。具体的には、エンディングノートを作成する際、自分の死後に財産を引き継ぐのは誰か、自分の財産は幾らで何があるのか、そしてそれらをどうしたいかについて、じっくりと考え、その結果をエンディングノートに記入すれば良い。作成中に考えが変わればいくらでも訂正が効く。つまり、遺言書の作成における重要な項目について既に考え意思表示をしていることになる。この内容を基礎として民法上の規定に従い正確に作成すれば、法的に有効であり自分の生前の意思表示も問題のない遺言書になるはずだ。このような遺言書があれば、死後の相続上のトラブルを回避できるだけでなく、円満解決に繋がるより良い相続に繋がるものと考える。