2008年にスタートした「ふるさと納税」。この制度が始まった当初は「自分の故郷でもない所に納税するの?」という疑問があったものだが、今やすっかり社会に定着した。定着した理由は、寄付金に応じた豪華な返礼品による所が大きいだろう。牛肉、お米、お酒、フルーツなどなど、その自治体の特産品がズラリと並ぶ返礼品。その競争は年々激化し、食品だけでなく多岐に渡る品々が現れ始めた。そして2018年、ついに「墓地」が登場したのだ。
長野県小諸市の「永代埋葬権」
返礼品に墓地が登場した自治体は、長野県小諸市だ。正確に言うと、市営墓地の「永代埋葬権」である。必要な寄付金は24万円で、埋葬権を取得すると市営高峯聖地公園内の合葬式墓地に遺骨を埋葬できる。使用期限は無期限、焼骨であれば宗派は問わず、施設の維持管理は市が行い、管理料、清掃手数料も無料となっている。
長野県小諸市が墓地を返礼品に選んだ理由や経緯
では、なぜ小諸市では墓地を返礼品として登録する事になったのだろう。2016年からふるさと納税に力を入れて来た小諸市では、全国的に何かアピール出来るものをという考えから、都市部の人口過密による墓不足の問題に対し、地方都市からのアプローチとして永代埋葬権を提案した。この合葬式墓地では、以前から県外からの入墓を受け入れていた事が、返礼品としての登録への後押しとなったと言う。2018年2月20日の受付開始以降、小諸市には2ヵ月で20件以上の問い合わせがあった。
「自然豊かな環境が素晴らしい」「以前から墓の管理が心配だった」「信州が好き」「地域に貢献したい」など希望者の理由は様々だが、寄付の控除額を考えれば、この返礼品は価値あるものとなるのではないだろうか。
他にもある葬儀終活関連の返礼品
返礼品に墓地があるという事は、その他の葬儀関連の返礼品も色々あるのではないかと思い、ふるさと納税サイトで検索してみた。
その結果、福岡県大川市「世界遺産 屋久杉使用仏壇」、静岡県藤枝市「コンパクトモダン仏壇」、茨城県笠間市「日本の銘石 稲田石の数珠」、佐賀県有田町「胡蝶蘭絵ミニ仏具セット」、岐阜県海津市「御前畳」などなど、豪華な品がズラリ。もちろん、お線香、蝋燭なども多数あり、墓地の管理・清掃となると数えきれないほど。ペット用の仏壇仏具まであった。
ふるさと納税とは「納税」という名称がついているが、実際は「寄付」である。寄付可能な上限金額以内の寄付をすると、自己負担分以外の金額が地方税から控除される仕組みだ。要するに、自己負担が2千円だとすると、豪華な返礼品が2千円で手に入るという訳である。また、寄付を増やすために地場産品とは全く関係のない返礼品を扱う自治体も現れ、このため、近年はふるさと納税がカタログショッピング化し、地方の活性化という本来の趣旨を見失っているという問題も指摘されている。
岐路に立たされるふるさと納税
小諸市のような永代埋葬権が返礼品として広まるかどうかは、今後のふるさと納税の在り方によって決まって行くだろう。現在、大阪府泉佐野市がAmazonギフト券を始めとする地場産品とは言い難い返礼品で問題視されている。
これに対し総務省は「返礼品は寄付金額の3割以下」「地場産品に限る」などの基準を明確にし、守らない自治体は6月以降制度の対象外とすると言う方針を発表した。これに対し泉佐野市長は真っ向から反論。ふるさと納税は、この先、どのような姿になって行くのだろうか。