「前世占い」が人気があるように、人は誰しも、自分が誰かの生まれ変わりだと、少なからず信じているのではないだろうか。「輪廻転生」とは、死んであの世へ行った魂が、新たな肉体に宿ってこの世に生まれ変わるという意味であり、古代から現代に至るまで、また、仏教国だけでなく広く世界的に抱き続けられている概念だ。「輪廻転生」が多くの映画やアニメなどでテーマとして描かれているのもその証明だろう。今回は、そんな「輪廻転生」や「生まれ変わり」をテーマにした作品を少しご紹介したい。
究極の輪廻転生を謳ったアニメ「伝説巨人イデオン」
【ストーリー】
西暦2300年、地球の植民星「ソロ星」では、移民たちが現地の「第6文明人の遺跡」と思われるメカを発掘し、その謎を調査していた。そこへ、ソロ星に無限エネルギー「イデ」が存在すると考えるバッフ・クラン星の異星人たちが調査にやって来る。バッフ・クランの姫カララは、地球人への好奇心から侍女と2人だけでソロ星に上陸する。慌ててカララを追って出撃したバッフ・クランの軍人たちの先制攻撃をきっかけに、地球人とバッフ・クランは戦闘状態に陥り、こうして、二つの種族の滅亡への戦いが始まった。
この作品は、従来のロボットアニメに哲学的、宗教的な要素を加えた挑戦的な作品だ。くだらない事から起こった戦争、誤解により深まる憎しみ、無限の力に対する人間の欲深さ、といった人類の愚かさが全編を通して描かれている。そして、無限エネルギー「イデ」によって全てが滅ぼされ、宇宙へと散った魂は、地球人もバッフ・クランもなく手を取り合う。その魂は大きな奔流となって一つの惑星に降り注ぎ、その惑星で新たな生命が誕生する。アニメと言うには深すぎる作品である。
前向きな生き方を教えてくれるコメディ映画「ワン・モア・タイム」
【ストーリー】
結婚したばかりのコリンヌとルイ。コリンヌは妊娠し、幸せな新婚生活を送っていたが、ある日、夫のルイが交通事故で突然亡くなってしまう。天国へと辿り着いたルイは、コリンヌが心配で、天国の番人に頼み込み、なんとか最速で生まれ変わりを認めて貰う。しかし、あまりに急いだためにルイは前世の記憶があるまま生まれ変わってしまうのだった。
23年後、コリンヌはずっとルイの事が忘れられず、精神科に通いながら暮らしていた。ある日、ルイの親友だったフィリップが、アレックスという青年をコリンヌの家に連れて来る。このアレックスこそ、ルイの生まれ変わりだったのだ。アレックスとの関わりで、23年前から止まったままだったコリンヌの心の時計が動き始める。
この作品は「生まれ変わり」をテーマにしたファンタジックなコメディだが、単なるドタバタ劇ではなく、笑いとユーモアの中に、過去に捕われず前向きに生きる事や、恋愛が人間を生き生きとさせる事、自分にとって一番大切な人を大切にする事がいかに重要かを描いたヒューマンドラマでもある。みんなが幸せになるハッピーエンドに、誰もが心が温まるに違いない。
生まれ変わるのは人間だけじゃない「僕のワンダフルライフ」
【ストーリー】
「犬が生きる意味とは」を考えながら生まれ変わりを続ける一匹の犬。何度目かの生まれ変わりの時、脱水症状で死にかけていた所を少年イーサンに助けられ「ベイリー」と名付けられた。命を助けてくれたイーサンとずっと一緒にいると心に誓い、イーサンと共に成長したベイリー。しかし年老いてついにイーサンとの別れの時がやって来た。その後、ベイリーはイーサンとの再会を夢見て何度も生まれ変わりを続けて行く。その先には、思いがけない運命の巡り合わせが待っているのだった。
人間と動物の関わりは、偶然ではなく必然だ。猫を拾った時、なぜ自分は今日、この時間にこの道を通ったのかと考える。その猫が亡くなり、もう猫を飼う事はないだろうと思っていても、何年後かに必ずまた猫と出会う。なぜ出会うのか。それは、その時その人にとって猫が必要だからだ。この作品でも、ベイリーが出会う人間は総じて孤独である。ご主人が孤独な時、神様はペットの生まれ変わりをそっと遣わしてくれるのだと、ペットを飼った事がある人ならば、この作品を見て思うだろう。
作品のテーマとしてヒントを与え続ける「輪廻転生」
この他にも、2015年に公開されたガス・ヴァン・サント監督、渡辺謙主演の「追憶の森」も印象深い作品だ。自殺を考え日本の富士山麓の自殺の名所「青木ヶ原樹海」にやって来たアメリカ人のアーサーが、そこで道に迷った日本人タクミと出会い、死について考える物語だ。これは、まだ成仏していない死者の魂が他者の肉体に宿るという設定であるが、そこに輪廻転生の概念がある事は間違いない。人間にとって永遠のテーマである「輪廻転生」は、この先も様々な作品を作りだして行くだろう。