相続税対策が必要か否か。よくある問題であり、誰もが一度は考えるのではないだろうか。筆者もよく質問を受けたことがあるし、また友人知人と話す際に相続税対策について、俺には関係ないとか、家に金なんてないから相続税対策はいらないというような話を聞くことが多い。聞く限りでは殆どの人が、自分は無関係であるとして終わってしまい、相続税対策をしないままでいるように見受けられる。果たしてそれで良いのだろうか。
相続税は富裕層向けの税金であることは間違いない
確かに相続税は富裕層向けの税金である事実は否めず、故に資産が無ければ相続税対策は無意味であると考えてしまうのも無理からぬことだ。しかし、平成27年(2015年)に相続税が事実上増税されたことをきっかけにして、多額の資産がなくても条件次第では相続税が課税される可能性がでてきた。今回は相続税対策の必要性について触れてみたい。
相続税対策が必要か否かの基準とは
ここで相続税の仕組みについて解説するが、相続税の基礎控除額というものがある。相続税は資産を有する者が所有するプラスの資産から、ローン残高等のマイナスの資産を差し引き、その残高に相続税が課税される。課税される際に3000万円+600万円×法定相続人の数で算出される基礎控除額を差し引き、基礎控除額を超える金額に相続税が課税されることになる。つまり、理論上は最低で3600万円を超える資産を所有していれば、相続税が課税されてしまう。
3600万円の資産の基準を不動産で考えると
3600万円といえば結構な金額に聞こえるが、良く考えてみて欲しい。東京23区の一等地のような、非常に高額で取引される土地でなくても、地方であっても鉄道駅の近くや大型ショッピングモールの近くに所在する土地ならば、かなり高額になる可能性がある。また、土地区画整理事業が始まるとか、鉄道駅が近隣にできるとなれば、土地の評価額は10倍以上になることも珍しいことではない。
不動産以外で資産となりえるのは
最近の事情だと、仮想通貨が大幅に値上がりしたとか、株式が大幅に値上がりする等、条件次第で基礎控除額3600万円はすぐに超えてしまうことになる。更に、相次相続(二次相続)により父親と母親が数年以内に相次いで亡くなり実家を相続した子が居た場合、子が所有していた資産と実家を合算すると、基礎控除額を簡単に超えてしまうことになるだろう。こうなると、富裕層でなくても相続税が課税され、相続税対策をしなかった結果、多額の相続税を納付しなくてはならなくなるのだ。
自分には資産が無いから相続税は関係ないと決めつけてしまう前に、一度自分の資産をしっかりと調査し、税理士や弁護士等の専門家に相談することを強く勧める。後悔してからでは遅いのだ。