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江戸時代に寺子屋の指導者を追悼する目的で全国各地で建てられた筆塚

現在の日本において、少子高齢化が深刻な社会問題となっている。そうは言っても「少子」ならば、かつての「子だくさん」が当たり前だった時代のように、多くの「見逃し」「放置」が生じにくく、子どもひとりひとりにきめ細かい対応ができるのではないか、と思われがちであるが、必ずしもそうではない。

江戸時代に寺子屋の指導者を追悼する目的で全国各地で建てられた筆塚

教育問題と教育者と少子高齢化

子どもを取り巻く教育環境、そして子どもと関わる教師の側に、様々な問題が生じている。小・中・高・大学の熾烈な受験戦争は依然として存在し、中学・高校の「ブラック部活」、教師の側からのパワハラ、セクハラ。教室内のいじめ、それに追い詰められた結果の不登校や自殺。
更に教師の側のモラル低下による種々の犯罪。一方の教師の側を悩ませている、授業そのものが成り立たない学級崩壊状態。教師に課せられた「ブラック」な長時間労働。そして教頭や校長からのパワハラ、セクハラ。また、理不尽な要求を学校側に突きつけてくるモンスターペアレントや、「運動会の音楽がうるさい!」などの、地域住民によるクレーム…毎日のように、日本全国の至るところで、こうした「教育問題」がテレビや新聞、またはインターネット上を賑わせている格好だ。
しかもそれらは抜本的な解決策が講じられ、今後2度と起こることがないというわけではなく、「またか…」と多くの人々を嘆息させるものが少なくないのだ。もちろん、先に挙げた諸問題は、少子高齢化以前には全く存在しなかったものではない。今まで潜在化していたこと、「許されていた」ことが、インターネット社会の今になって、明らかになっただけに過ぎない。

そのような日本の「教育問題」を考えるにあたり、かつて日本全国で多く立てられた「筆塚(ふでづか)」を取り上げてみたい。

そもそも筆塚とは?

筆塚とは筆子塚(ふでこづか)とも呼ばれ、江戸時代後期から爆発的に全国に広がった「寺子屋」の師匠を称え、追悼するために、その教え子であった「筆子」たちが立てた塚のことである。「人形塚」「包丁塚」などのように、「もの」を供養する塚という意味合いも兼ね、塚建立の際に、使い古しの筆を埋める場合もあったという。現在の千葉県内では、江戸期にこのような塚が3000基以上建立されたと言われている。

埼玉県日高市に残る筆塚

埼玉県日高市に残る筆塚

埼玉県南西部、西武池袋線・秩父線の高麗(こま)駅からほど近い、台(だい)の円福寺の一角に、「宿老庵貫斎翁」こと新井丈右衛門定季(1818〜1901)を顕彰した筆塚がある。この塚の「筆塚」の2文字は、幕末〜明治期の日本の立役者・勝海舟(1823〜99)が記し、その上の「宿老庵貫斎翁」の6文字は、文久3(1863)年8月18日の政変で京都を追われた「七卿(しちきょう)落ち」の1人、東久世通禧(ひがしくぜみちとみ、1833〜1913)の手によるものだ。

定季は、代々土地の名主で、村役人も務めた新井家の11代目当主だった。塚のそばに置かれた立て札によると、隠居後の嘉永(1848〜55)〜安政(1855〜60)年間に、台村で塾を開き、近在の人々に学問を教えていたという。

江戸時代に爆発的に広がった寺子屋とは

そもそも「寺子屋」、或いは「手習(てならい)塾」とは、江戸時代前後に始まった、庶民を対象とした初歩的な教育施設のことを言い、特に、一般大衆の間に識字欲が高まってきた江戸時代後期に爆発的に広がった。現在の埼玉県内においては、享保期(1716〜36)から文政期(1818〜30)に開かれた寺子屋は400余りだったが、天保期(1830〜44)から明治5(1872)までの幕末期から明治初頭までには、900以上に上ったと言われている。寺子屋の存在は、明治5(1872)年から整備されていく国内の学校教育制度、そしてそこで教えられる西欧的な近代教育を日本人が受け入れる素地をつくってきたものでもあった。

師匠・指導者はどんな人が務め、何を教えていた?

こうした寺子屋の「師匠」は、定季のような地域の名士が隠居後に行う場合ばかりでなく、幕臣、諸藩士、浪人、書家、医者、神主、僧侶、町人など、多種多彩な人々が行なっていた。そしてそこで教えられるのは主に習字だったが、算術、漢文の素読(そどく)、時に師匠の妻が女子に対して、裁縫なども教えていたという。しかも多くの寺子屋や塾では、毎月末に習った手本の読みを「おさらい」したり、暗記させたりする「小浚(こさら)い」や、年末には師匠の前で手本を読んだり、暗記したものを発表したりする「大浚(おおさら)い」などを行い、子どもたちに学んだことの「定着」を図っていた。また、寺子屋や塾に対する謝礼としては、まず、入学の際に「束脩(そくしゅう)」と呼ばれる、金銭か菓子折などを師匠に納める。その後、五節句毎に思い思いの謝礼金を納めるところ、「月並(つきなみ)銭」「天神講」「畳料」「炭料」などの名目で、毎月または毎年、若干の金を徴収しているところもあったという。

日高市の筆塚に眠る定季は何を教えていたのか

定季の手習塾では、どんなことを教えていたのだろうか。筆塚の書をしたためた勝海舟や東久世通禧との深い関わりが推察される定季であるので、旧来の実利的な「読み書き算術」に加え、海舟が得意とする西洋兵学、明治4(1871)年に欧米視察団の一員であった通禧による、欧米の様子などを聞き知り、何らかの形で、子どもたちに話して聞かせていた可能性もある。
だが、たとえ先進的なことを教えていなかったにしても、定季は台村の教え子たちに尊敬されていたからこそ、その死後に立派な塚が立てられた。そしてその塚を通して、教え子たちは定季の偉業を称え、追悼していたことは間違いないだろう。

もしも現代日本で地域の教育に貢献した方が亡くなったら

今日、もしも地域の立派な教育者が亡くなった際、その人を顕彰するとしたら、我々を含む「教え子」たちは何をするだろうか。さすがに、筆記具として「筆」を使わない我々であるので、「筆塚」がつくられることはないだろうが、地域史に記事が載ったり、伝記が書かれたり、またはその人をかたどった銅像や記念碑がゆかりの土地に立てられるのだろうか。

時代は変わっても、そして最初に紹介した多くの「教育問題」が存在し続けるにせよ、江戸期の寺子屋、手習塾の師匠のように、教え子に敬意を持たれ、それを後世に伝えるべく尽力される、有名無名の教育者がこれからの日本に多く出てくることを、切に祈るばかりである。

参考文献

■加藤喜代次郎・新井清寿(編)『高麗郷土史』1974年 日高市教育委員会
■小久保明浩「寺子屋」西村松之助・郡司正勝・南博・神保五彌・南和男・竹内誠・宮田登・吉原健一郎(編)『江戸学事典』1984年(421−423頁)弘文堂
■松浦玲「勝海舟」下中弘(編)『日本史大事典 (2)』1993年(251頁) 平凡社
■小野正雄「東久世通禧」下中弘(編)『日本史大辞典 (5)』1993年(956−957頁) 平凡社
■日高市史編集委員会・日高市教育委員会(編)『日高市史 近世資料編』1996年 埼玉県日高市
■田代脩・塩野博・重田正夫・森田武(編)『県史11 埼玉県の歴史』1999年 山川出版社
■高橋敏「筆子」福田アジオ・新谷尚紀・湯川洋司・神田より子・中込睦子・渡邊欣雄(編)『日本民俗大辞典 下』2000年(479頁)吉川弘文館
■日高市史編集委員会・日高市教育委員会(編)『日高市史 通史編』2000年 埼玉県日高市
■伊豆井秀一「シリーズ埼玉のすまい 26 清流のまち 日高」埼玉県住まいづくり協議会(編・刊)『Smile通信』2012年10月(2−3頁)
■八鍬友広「寺子屋」木村茂光・安田常雄・白川部達夫・宮瀧交二(編)『日本生活史辞典』2016年(458頁)吉川弘文館

ライター

鳥飼かおる(掲載日:2018/10/15 更新日:2022/10/31)

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