袈裟とは?
袈裟というのは、僧侶が法衣の上にまとう衣のことです。左肩から右側の脇下へ体に巻くようにしてかけている衣装で、これはパッチワークのように四角い布をつなぎ合わせて作られています。もともと古代インドの出家僧が身にまとっていた「三衣(さんえ)」が元となっています。
この三衣とは、俗世間の物欲などを断ち、質素な生活を送る修行僧が、3種類の衣類を持つことを許可されたことをいいます。また袈裟のことを「糞掃衣(ふんぞうえ)」と呼ぶこともありますが、これは糞同様に捨てられているボロ布が使われていたためです。今では新品の布を使いますし、故人の着物などで袈裟をこしらえ、供養することもあります。
縫い合わせる布の枚数により、五条、七条、九〜二十五上の3種に分けられます。いずれも奇数であるのは、割り切れないことから陽の数とされているからです。四角い布を数枚、つなぎ合わせた縦一列を一条と数えますので、五条は五列、七条は七列です。五条は作業着として、七条は日常的に身にまとう普段着、そして九条以上は正装用として着用されます。
これらのほかに、五条を細長く折りたたんだ「折五条」、これを畳まず輪に仕立て上げた「輪袈裟」、輪袈裟を半分にして紐でつないだ「半袈裟」が基本形となります。天台宗、真言宗では、袈裟の中に仏様の種子(サンスクリット語)を入れて仕立てます。
袈裟の豆知識:ことわざや語源にも使われる「袈裟」
袈裟といえば、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざが思い浮かびます。お坊さんを憎いと感じると、着衣である袈裟までも憎らしく思うことですが、江戸時代の寺社統制が関係しています。宗教の勢力を脅威に感じた幕府は、民衆を仏教宗派のいずれかに属すよう「寺請制度」を設けました。幕府の後ろ盾を得た寺の力が大きくなるに連れ、汚職といった不祥事も増えましたから、お坊さんを快く思わない人もいたのです。
「大袈裟」とは、話を誇張したさまを指します。文字通り大きな袈裟のことで、僧侶の栄西(臨済宗の祖)が語源の由来という説もあります。大きな袈裟を身にまとい町中を歩き、物言いも大仰だったことから誇張する様に使われるようになったのです。
そして柔道の技名でも「袈裟」が使われています。「袈裟固(けさがため)」がそれで、仰向けにした相手の首に腕を回して、体を押さえつける技のことです。首に回した腕が袈裟のようであることからこの名がつけられています。
柔道だけではなく、レスリングではグランドヘッドロックと呼ばれる袈裟固の一種が使われますし、総合格闘技でも用いられています。袈裟固の変化技は「崩袈裟固」と呼ばれ、さまざまな種類があります。