喪中とは?
まず、「喪中」と「忌中」の違いとはなんでしょう。
「忌中」とは、近親者が亡くなった際、喪に服し、「死の穢れ」から避けることをいいます。一般的な忌中の期間は四十九日(77日)で、「死の穢れが強い」時期と言われており、祭りごとなどに出ることは避けたほうがよいとされています。「死」を「穢れ」とする「死穢観念(しえかんねん)」という考えからきているもので、精神的なショックを受けている遺族が故人を偲び、時間をかけて精神的な傷を癒す時間とも言えます。
「死の穢れから避ける忌中」とは異なり、「喪中」とは「故人を偲ぶ期間」です。慶事への出席を控え、昔は喪服を着て外出していたそうです。
忌中と違い、喪中は、喪に服す期間が故人との関係で異なります。
・夫・妻(0親等):13ヶ月
・父母・義父母(1親等):12ヶ月~13ヶ月
・子ども(1親等):3ヶ月~6ヶ月
・祖父母(2親等):3ヶ月~6ヶ月
・兄弟姉妹(2親等):30日~3ヶ月
・曾祖父母・伯叔父母・伯叔父母の配偶者・甥・姪(3親等):喪中としない
3親等以降は喪に服してはいけない、というわけではありません、故人との深い縁があるなら、親等に関わらず喪に服してもよいとされています。ちなみに、「死を穢れとして考えない」宗旨では、「忌中」も「喪中」もありません。例えば、浄土真宗やキリスト教などにはその概念がありません。
喪中には、次のことに気をつけましょう。
1.正月のお祝い(年賀欠礼含む)
2.初詣。
これはお寺へ初詣するか神社へ初詣するかで異なります。お寺ではお正月には故人や先祖への新年の挨拶をするという考えで、喪中でもお参りは問題ないとされています。神社への初詣は、初詣に限らず五十日祭を終え忌明けになるまで鳥居をくぐることは避けたほうがよいとされています。
3.神棚の手入れ。新しく取り替えるのは五十日祭の後がよいとされています。
4.お年玉・おせち料理。
遺族の悲嘆が深い場合、心中を気遣い、年賀に関することは控えたほうがよいでしょう。それでも、という場合は、お年玉なら表書きを「お小遣い」や「書籍代」としてあげましょう。また、おせち料理は普通の料理として出しましょう。
5.お中元・お歳暮は、喪中であっても贈ることができます。
相手が喪中であっても贈れます。お中元やお歳暮とは、感謝の気持ちを伝えるために贈るものですから、「お祝い」には当たらないためです。
ただし、贈るのは四十九日を過ぎてから、また、紅白の熨斗も使用しないようにしましょう。
もし、あなたが喪主・遺族の場合は、香典返しとかぶらないよう気をつけましょう。受け取る側の混乱を避けるため、忌明けに香典返しを贈り、お中元やお歳暮は改めて贈るようにしましょう。
6.「御年賀」は慶事です。年始参りはとりやめましょう。
もしご挨拶に伺う場合には、松の内を過ぎてから訪問し、表書きは「御年賀」ではなく「寒中見舞い」としましょう。
7.結婚式など慶事への出席(忌明けを迎えていれば問題ない、という考えもありますので、周りと相談して決めましょう)。
身内の結婚の場合は、もちろん喪中は避けたほうがよいのですが、式の延期や中止はキャンセルや出席者の都合を合わせてもらわなければいけない点等影響が大きいため、四十九日の忌明け以降であれば通常どおり執り行なう方が増えています。
8.喪中の方から出産祝いをいただいた場合。
内祝いは四十九日を過ぎてから贈りましょう。
9.喪中の旅行は「遊興を控える」という考えから避けたほうがよいでしょう。
喪中の豆知識:「忌中」の紙って?
玄関に「忌中」の紙を貼ってあるのを見たことありませんか。最近ではあまり見かけなくなった「忌中」の紙、あれは、「忌中紙」といい、その家で亡くなった方がいらっしゃることを知らせるためのものです。
これは「死=穢れ」、「穢れ=伝染する」と恐れられ、他に人々が感染しないよう、亡くなった方がいることを告知し「遺族は死の穢れに染まり、家に籠っています」と知らせたそうです。
今では「死=穢れ」とは捉えられなくなり、単に、亡くなった方のいる家、という告知板のようになっています。本来は、玄関に「忌中紙」を直接貼るものではなく、すだれを裏返しにし、その上に忌中紙を貼ったそうですが、時代とともにすだれは省略され、忌中紙のみを玄関に貼るか、額に入れて掛けるようになりました。
この忌中紙を貼る期間は、本来、100日忌までですが、今は49日忌までとされています。(100日忌とは「卒哭忌(そっこくき)」とも言い、愛する人が亡くなった悲しみで泣き明かした遺族の気持ちも落ち着く頃です、という意味になります)最近ではあまり見かけなくなったこの忌中紙、何故、貼らなくなったのでしょう。
1.地域の関係が希薄になったため
核家族化が進み、戸建てからマンション住まいになる家庭が増え、近所づきあいも希薄に、さらには「直葬」「家族葬」等、身内での葬儀を行なうことが多くなったので、周りに不幸があったことの告知をする理由がなくなったから。
2.情報の伝達手段が変化したため
昔は回覧板などの連絡事項を紙に書き回覧し、さらに忌中紙を貼ることで、ご近所に亡くなった旨を伝えていましたが、今では携帯電話やメールなどの伝達手段が発達し、わざわざ忌中紙を貼る必要がなくなったから。
3.空き巣の被害に遭いやすいため
忌中紙の中には、自宅以外の式場の場所やお通夜、葬儀・告別式の日時を記載したものもあります。すると「自宅に誰もいない時間がわかりやすい」、「香典(多額の現金)を手元に置いている」などと分かってしまうため、空き巣に狙われやすいです。
最近では、回覧板にも個人情報保護や空き巣防止の観点から、お通夜や葬儀・告別式の場所、日時は記載しなくなりました。物騒な世の中に、故人も遺族も嘆いている心の時間さえ奪われてしまいます。