棺回し 三度回しとは?
告別式が終わり、出棺する際に行われる儀式のことです。棺を担いだ人たちが、霊柩車に乗り入れる前に、棺を担いだままその場で三度回ります。三度回り終えたら霊柩車に棺を運び入れます。
一般的にはあまり行われませんが、地方の習慣としていまだに行われているところが各地に存在していて、おそらく以前は全国どこにでもあった風習だったのではないかと予測ができます。時代とともに葬儀の形式も変化し、簡略化されてきたなかで徐々に淘汰されていったのかも知れません。
各地によって棺回しのやり方については多少の違いはあるようです。三度回す方向が右回りであったり左回りであったり、またそのいわれや、意味合いについてもそれぞれの解釈に相違があります。
あるところでは、お釈迦さまのお父上さまが亡くなられたときに、お屋敷で暮らした日々を懐かしみ、色々見せてあげたいという思いから、お釈迦さまがお父上様の亡き骸を担いでお屋敷を三周したことが始まりである、と解釈しているところもあるようです。
また棺をぐるぐると回すことで、亡くなった人の方向感覚を奪い家に戻って来ることのないようにするという説もあります。それは幽霊になって戻ってこられたら嫌だからという俗っぽい話しではなく、この世のことはきっぱり忘れて、迷うことなくあの世で幸せでいて欲しいから、という遺族の願いが込められているのです。こちらの意味の方がどちらかというと一般的で各地に残る風習としては広く信じられているようです。
棺回し 三度回しの豆知識:変わった風習
地域によっては脈々と続いてきた葬儀の風習というのはたくさんあります。それが変わることなく永遠に続いてきたものか、どこかで解釈が変わってしまって今に至るのかはわからないものも多くあります。
例えば、変わった風習として、参列者が額に白い三角巾をつけて参列するところがあります。幽霊のお馴染みのアイテムです。それを亡くなった人ではなく、参列者がみんなつけてくるというのですから、知らない人からすればかなり衝撃的な状態でしょうね。
また出棺のときに行う習慣として、亡くなった人が愛用していた茶碗を遺族の手によって割るというのもあります。こちらは比較的行われている地域も多いようです。
旅装束として亡くなった人に持たせるもののひとつに頭陀袋が用意されていて、葬儀中に備えてあった枕飯をおにぎりにし、葬儀が終わり出棺する前に握り飯としてその頭陀袋に入れて持たせてやるという習慣もあります。
その地域、地域でその場所に合った考え方などによって、受け継がれた風習というものは形を変えながらも生き続けています。日本の歴史を知る大きな手がかりとなるのが、このような民衆によって続いてきたものにこそ残っているんですね。