特別受益者とは?
まず、特別受益というのは被相続人に将来なる、であろうひとから、生前に財産となりうる価値に値するものを受け取ることを、特別受益といいます。
そして、特別受益を与えていたひとが亡くなり、その人の遺産を受け取ることのできる相続人という立場になった場合、受け取れるはずの遺産から特別受益分を差し引かれた分の遺産しか相続できない相続人を、特別受益者というのです。
相続する立場にあるのが一人であった場合には、財産分与の問題は起こらないでしょう。ですが、相続人が複数いる場合、この特別受益という問題はトラブルの原因として相続人間で争いになるケースが多々あります。
例として、親子間での相続が行われるケースでは、兄弟がいるのであれば特別受益は大きな問題となってきます。遺産を分配する協議において、話し合われるのが第一に公平で平等な分割の方法ということでしょう。そこに少しでも不平等なことがあれば、協議は成立しない可能性が高くなります。この兄弟間での特別受益でよくある事例で、兄が大学進学、弟が高卒で就職(又は兄と弟が逆)していた場合、進学にかかった費用が特別受益の問題として取り上げられることがあります。
特別受益者の豆知識:適用されない「特別受益の持ち戻し」
被相続人から生前に特別受益にあたる贈与などを受け取っていた場合でも、本人が相続放棄を行ったのであれば「特別受益の持ち戻し」は適用されません。
「特別受益の持ち戻し」とは、遺産分割の公平を図るために民法によって定められた制度で、具体的に金額で算出する計算方法です。被相続人から生前受け取った金額を、分割する遺産にプラスして各相続人に分割し、そこから特別受益者は生前受け取った金額を引くという方法です。
相続放棄するということは、勿論遺産は入ってきません。ですが、少なくとも自分はトラブルや争いを避けることに繋がります。どちらが得なのかは、それこそ本人の価値観や考え方次第なのでしょう。
また、被相続人である故人が、遺産の分割方法を遺言によって明確に指定している場合にもこの制度は適用されないのです。適用はされないとはいえ、遺族や相続人の間でトラブルや争いがないのかといえば、それは別問題といえるのかもしれません。不公正感といった、ひとの感情や心における問題は、法や制度では解決できないものもあるのではないでしょうか。
制度が適用されない事例として、相続人の中で「特別受益の持ち戻し」を誰も請求しなかったのであれば、この場合も当てはまるのです。
一番の解決策は、日頃からの関係性ということに集約されるのでしょうか。