清拭とは?
清拭とは、病人などの身体をきれいに拭くことをいいます。ただここでは、清拭の中でも亡くなった方の身体を拭くことについて説明します。故人は、終末期には病気やケガなどで満足に身体をきれいに洗えません。その分を、亡くなってからですが、アルコールを含ませたガーゼで身体を清めて衛生上の処置を行うのです。
清拭は、死亡の判定がなされたあと、すぐに行われます。病院で亡くなった場合は看護師などの医療関係者が、自宅で亡くなった場合は訪問の医療従事者や葬儀社の方などが行います。故人の生前の苦しみや迷いを洗い清める、という意味があります。身体をアルコールで拭いた後は、体液が流れ出さないとうに、口や鼻、耳などにガーゼを詰めます。この一連の流れを「エンゼルケア」とも呼びます。
清拭の豆知識:エバーミングとは?
日本では、死後の処理としては、上述した清拭、またはエンゼルケアと呼ばれるものが主流です。では海外で主流の「エバーミング」とはどのようなものなのでしょうか。
海外では、エバーミングは「エンバーマー」とよばれる、エバーミング専門の資格が存在し、その取得者によって行われます。まず全身の消毒と洗浄をします。次に遺体の表情を整えたり髭を剃ったります。その後、遺体の動脈から防腐剤を注入し、静脈から血液を排出します。同時に腹腔内も防腐処理がされます。このエバーミングにより、ドライアイスなどを用いなくても、10日ほどは遺体の維持が可能になります。すぐに火葬をすることが主流の日本ではまだあまり普及はしていませんが、土葬が多いアメリカでは90%がエバーミングで遺体が処理されます。
エバーミングの利点としては、青白かったり痩せてしまったりしている遺体を、生前の顔色が良くふくよかな状態に戻せること。また、事故などで亡くなった場合は、できる限り損傷部位を修復することができます。
日本では、遺体に手を加えるということに対して、昔から様々な議論が行われてきました。しかし1994年に、エバーミングは「死体損壊罪」にあたらないと認められ、日本遺体保全協会(IFSA)という協会認定の技術者が行っています。エバーミングには、遺体を生前の元気な頃の状態に戻すだけでなく、感染症や伝染病の予防という衛生面でのメリットもあります。日本でも、火葬以外の方法が選ばれるケースが増えたり、このようなメリットが認識され始めたりすると、エバーミングの需要が高まっていくかもしれません。