拾骨とは?
拾骨とは、収骨とも書き、ともに読みは「しゅうこつ」です。火葬後に残った故人のお骨を拾う、もしくは儀式的に拾うことを言います。
拾骨の作法としては、二人一組で箸から箸へとお骨を渡していき、骨壺に入れる、これが「箸渡し」です。具体的には火葬の済んだ後に、係員から指示がありますので従うと良いでしょう。指示に従って、参列者は火葬炉から出されたお骨の周りを取り囲みます。その後喪主に箸が渡されますので、喪主から遺族、つぎに親類、それから知人や友人といった故人と縁の深い順番に、二人一組でお骨を箸渡しで骨壺に入れていきます。拾うお骨の順は、足の部分から上半身に向けての全身です。このような所作を順番に繰り返していくのですが、参列者全員が一巡しても終わらない場合は、再び喪主から順番に箸渡しを行います。こうしてすべてのお骨を拾い上げた後、最後に残った「喉仏」の部分を、喪主と故人に一番近しい血縁者の二人で、骨壺に納めます。
一般的に、特に関東では全身のお骨を拾い上げることがほとんどですが、関西ではやり方が異なります。関西では全てのお骨を拾わず、喉仏だけ、あるいは喉仏とお骨の一部だけを骨壺に納めることが多いようです。ですから骨壺のサイズも関東と関西とで違いがあります。関西では5寸または6寸、直径15センチから18センチのものを使うようです。ちなみに一般的な骨壺のサイズはおよそ直径21センチの7寸サイズで、関東地方ではこちらが中心です。
ところで、喉仏をなぜ最後なのか。これには大切な理由があります。実は私たちが「喉仏」と思っている、成人男性によく見られる喉の突起部分は厳密には骨ではありません。軟骨です。ですから実際には火葬の際に焼失してしまいます。本当は「軸椎」という首の骨の一部を拾っているのですが、その形が座禅を組んだ姿に似ているので、拾骨の時には故人のなかに仏様がいらっしゃるという意味を込めて「喉仏」と呼んでいるのです。
拾骨の豆知識:辛すぎて拾えない、拒否できないか
少し前まで肉体を持っていた人が、声や姿を思い出せる人が、全く違うものになってしまう。これは遺族でなくとも辛いものです。そのような思いを抱えながら拾骨をするのは苦しいでしょう。できるなら拒否したいのも当然です。では実際に拾骨を断ることはできるのでしょうか?
結論から言うと、拾骨を拒否することはできます。ただ、本来拾骨というのは、故人と向き合うことで遺族にとっても区切りになり、また故人にとっても、供養やこの世への未練を残さないための大切な儀式です。ですから可能な限りお骨は拾った方がいいのです。
とは言っても宗教的、あるいは心情的な理由もあるでしょう。その際には、いざ拾骨という時に一人だけが断ったり、または係員に依頼してかわりに骨壺に納めてもらうことも可能です。今では拾骨という儀式自体をしない選択も増えてきました。また自治体によっては、火葬の際に必要な「火葬許可証」に、火葬後のお骨はどうするかのチェック項目が記載されているところもあるようです。そこでお骨は引き取らないといった意思表示をすることで、火葬場の職員が「処理」してくれる場合もあるようです。もちろん廃棄物として捨てるわけではなく、慰霊碑などに鎮めることがほとんどです。
拾骨は故人への供養でもありますが、現実的なことを言うと、貴金属を入れたのに見つからないなど副葬品に関するトラブルを防ぐため確認してもらう、といった意味もあります。そこで余分に辛い思いをしないよう、「あの人の骨を拾えるか」を日頃から自問する必要がありそうです。