2010年7月、日本で臓器移植法が改正され それまで行えなかった本人の意思が不明な場合の家族の承諾による臓器提供が可能となった。日本ではより臓器提供を行いやすい環境の整備が進んでいる。臓器提供したときに、提供者の葬儀では何か特別なことはあるのだろうか。そもそも、臓器提供の後の遺体は葬儀までどのように扱われるのだろうか。
臓器提供の今
2010年以前では、日本では臓器提供は厳しい制限のもとに行われていた。
1997年に施行された臓器移植法の定めるところでは、心停止の場合の臓器移植は家族の承諾が、脳死の場合での臓器移植はそれに加えて本人の書面による意思表示が必要であった。またこの意思表示については民法における遺言可能年齢に準じたため、15歳未満の臓器提供は行えなかった。
これにより特に小さな臓器が必要とする難病の子供たちに臓器移植を行うことが難しく、子供たちは多額の募金をし海外へ渡って手術をする必要があった。
2010年7月、改正臓器移植法が全面施行された。これは本人の意思が不明な場合に、家族の承諾によって心停止・脳死どちらの場合でも臓器提供を行うことを許可したものだ。これにより15歳未満の臓器提供も可能となり、以前と比べずいぶん臓器提供がしやすい環境が整えられたと言える。
臓器移植はもちろん本人の意向によるところが大きいが、遺族にとっても重大でよく考えるべき出来事である。身内が臓器提供をしたら、その後の流れはどうすればよいのだろうか?
臓器移植後、遺体が遺族のもとへ戻るまで
臓器提供の意思表示をしている人が亡くなった場合、そのまま臓器摘出手術を行う。手術時間はおよそ2時間から6時間程度だ。
臓器を摘出した跡は当然くぼみが残るが、その箇所には手術後に詰め物がされるため、見た目は亡くなったときとほとんど変わらない状態で 遺族のもとへと返される。また、眼球を提供した場合には義眼が入れられる。
死後の体の提供としてはもう一つ「献体」があるが、こちらは遺体を提供したあとに 病院側で火葬がなされ、1~2年後に遺骨が遺族に返還される。
臓器提供の場合は 提供した臓器以外は触れられないので、手術が終わり次第すぐに遺族のもとへ遺体が返還される。よって、臓器提供の場合には、臨終した後の数時間 遺族の手元から遺体が離れること以外は通常とほとんど変わりはない。
臓器提供をしても葬儀の流れは通常と変わらない!
臓器提供を行った際の通常との違いは、先述した通り臨終後に手元を離れ臓器の摘出手術が行われるということ。臓器提供を行ったからといって、葬儀や通夜の流れや作法に違いはなく、通常通り行うことができる。もちろん式中に故人が臓器提供を行ったかどうかを言う必要はないし、言ってもいい。
臓器提供はもちろん本人の意思表示によって決まることが多いが、法が整備された現在、それについて悩むのは家族や親族も同様のことだ。自身を見つめ、自分や家族が臓器提供を希望するのか、あるいはしないのか、家族間でよく話し合うことも必要だろう。臓器提供を行う場合には、そのことを葬儀で公表するか否かまで決めておくといいかもしれない。環境が徐々に整えられているとはいえ、日本での臓器提供のシステムは未完成なところも多い。それぞれの事情や考えを尊重しつつ、自分たちはどうしたいのか考えておきたい。