近頃お葬式は一般葬・家族葬・お身内葬・直葬など様々です。特に『家族葬』でのお見送りが増えているのが感じられる昨今、公正取引委員会の報告書でも多くの事業者が葬儀の小規模化が増えるだろうと予測しています。背景にあるのは少子高齢化や価値観の多様化、家族の数も減り大規模な葬儀は執り行えなくなる、友人知人も減り参列者の数も少ないなど個々様々な例があると思われますが、家族だけでゆっくり心から見送れるということもあって選ばれていると思います。
以前は「せめて焼香だけでも」が叶えられ、むしろ感謝されることすらあった
ただ個人を見送りたいのは家族だけなのだろうかとの思いもわいてきます。もう10年近く前になりますか、これ程家族葬ということが一般的ではなかった頃、近所のご老人が亡くなりました。老夫婦二人きりの静かな生活でご病気がちでもありました。私たち近所に住む数軒のものは時々様子を見に行ったり、救急車を呼んだりと時たまでしたがお世話をしていました。お葬式は家族葬で行うのでとの回覧が回りましたが、何となく心残りがあり、近所で相談した結果、お葬儀場の片隅でいいので参列・焼香したい旨をご家族にお願いに行きました。結局お葬儀に参列させていただき、なんとお棺のくぎ打ちまでさせていただきました。遠方に住む息子さんやご親戚に、かえって感謝され恐縮した記憶があります。
今思うと大変差し出がましい行動だったと思います。今であれば家族葬でとご通知があれば、ご家族の意向を尊重するのが当然のこと。友人・知人の死も、そっと心の中で見送る、それが時代の流れかと思っていました。
お別れ会が急増する理由
ところが先日、日経新聞に『お別れの会』が増えているとの記事が載っていたのです(8月12日付)。『お別れの会』といえば有名人や著名人が亡くなったときに開かれるものとの思っていましたが、現在では一般の方が急増しているとのこと。主催するのはご家族の場合もありますが、友人知人が開催することも多いそうです。時間がたってから開催することもあり、遺体や遺骨などは置かず宗教色も薄いので、場所を選びません。遺影を囲んで和気あいあいと故人をしのぶことができ、大変好評だとのこと。
人間は太古の昔から亡くなった人を弔ってきたといわれてきました。付き合いがあった方が亡くなったとき、人は何らかのけじめが欲しいのだと思います。思い出を話し涙を流し亡くなった方を悼む。そんな場を超えて、やっと心のけじめがつけられるのでしょう。
『思い出の会』は癒しの場でもあると思います。これからも規模の大小を問わず増えていってほしいと願います。