出雲大社のおひざ元、島根県のお葬式が少し変わっていると聞きました。特に一番びっくりしたのはお葬式にお赤飯を出すということでした。お葬式や法事、お盆にはおこわを出すところは、各地にあります。しかしそれは白や醤油で味付けしたもち米に黒豆やインゲン豆を入れたりしたもので、北海道では『黒飯』、金沢では『みたま』と呼ばれて、東京近辺では見かけないものの、全国各地でおこわは良く振舞われています。つまりおめでたい時に出される『お赤飯』とは、どこでもちゃんと区別があって不祝儀の時は不祝儀用のおこわを用いるものなのだと信じ込んでいたのです。
長生きできたことはむしろおめでたいこと!
しかしそれは私の無知にすぎませんでした。島根だけではなく『お葬式にお赤飯』は案外当たり前のようなのです。福井県や新潟・群馬、東北地方にもその風習があるそうです。また長野県の一部では長寿で亡くなった方の葬儀に赤飯が振舞われるそうです。
葬儀で赤飯を出す起源ははっきりとはわかりません。ただ江戸時代からはもうあったようです。理由の一番は長野の場合のように長寿者の場合です。こんなに長生きできたことはむしろおめでたいと考え、その長寿にあやかろうとすることのようです。
また浄土真宗では亡くなった方は極楽浄土に行くのだから祝うべきとの考えもあるようです。このような祝いの考えのほかに、小豆の赤は邪気を払うので災いを転じて福をもたらしてくれるようとの『縁起直し』の意味もあるとされていました。小豆の力を借り、悲しみを乗り越えようとのことでしょうか。また古来、赤米を食べていたのでその苦労を忘れないためとの説もあるようです。
そんな地域独特の葬儀慣習が減ってきている…。
とにかく「お葬式に赤飯」はかなり広く分布していました。しかし福井県の業者さんの話として、葬式で赤飯はここ20年ほどの間に徐々に減ってきているそうです。ほかの県でも減りつつあるようです。原因として葬儀が自宅ですることから葬祭場で営まれるようになってきたことが1番にあげられています。
日本の葬送は大きく変化を遂げました。衛生的になり家族の負担が減るのは喜ぶべきことです。ただ画一的になり、地方の風土に根付いた風習が無くなっていくのはいかがなものでしょう。その地方だからこそ必要だったためにその風習は続いてきたのだと思います。土地の葬儀の在り方を残すことは、その土地の個性そのものを残すことに繋がるのではないでしょうか。