相続において、最も問題となるのが遺産分割協議であることは間違いない。しかし、状況によっては遺産分割協議以前の問題が発生することがある。
今回は、そもそも相続人とは何かということも踏まえ、相続人に問題があった場合について綴っていく。
増加が見込まれる老老相続
相続人とは何かと言えば、相続税法や民法に規定されているので、詳細は当コラムでは解説しないが、相続人自身が様々な問題を抱えていることがある場合には、相続人本人ではなく代理人を立てて相続の手続きを遂行することがある。
実例は決して少なくはないし、今後のことも考えると、増加していくかもしれない。
相続人が認知症だった場合は成年後見制度を利用!
代表的な例は、相続人が認知症に罹患し、判断能力が欠如していると認められる場合だ。
この場合だと、認知症に罹患していることを主治医から証明して貰い、成年後見人制度を利用することによって相続の手続きを遂行できる。
成年後見人についての概要は、家庭裁判所に申し立てをし、認められれば成年後見人が当該被後見人の代理として様々な権限を持ち、執行できる制度だ。
家庭裁判所に申し立てる場合には司法書士や弁護士を通せば簡単にできる。無料相談会も開催されているので、後学のためにも相談してみるといいだろう。
相続人が行方不明だった場合は不在者財産管理人制度を利用!
もう一つの例として、相続人が行方不明だった場合だ。この場合も不在者財産管理人制度を活用し、相続の手続きを遂行できる。
聞き慣れない言葉かもしれないが、行方不明者に変わり、本人の財産(相続財産も同様)を行方不明者が戻るまで維持管理し、状況によっては、財産の売却も代理で執行できる制度だ。
概要は成年後見人制度と同様に、家庭裁判所に申し立てをすることで活用できる。当然、司法書士や弁護士に依頼した方が、迅速に行動できるし、確実だ。ただ、相続人が七年以上の長期に渡り行方不明であった場合には、別の制度を活用することができる。それは、失踪宣言を受けることだ。
家庭裁判所に申し立てを行うのは、前述の他の制度と同様であるが、相続人が失踪宣言を受けると、法的に死亡したとみなされる。その後に相続の手続きが遂行されるのである。もし、失踪宣言を受けた相続人が戻った場合には、家庭裁判所にその旨の申し立てをすれば死亡扱いは解除されることになる。そして、相続の手続きは再開されることとなる。
相続とは被相続人(亡くなった人)と相続人が居て初めて成立する。
筆者の経験上では、行方不明者を取り扱ったことは無いので何とも言えない。
しかし、認知症に罹患した相続人という存在は、何度も目にしてきている。
相続とは被相続人(亡くなった人)と相続人が居て初めて成立する。
誰が相続人で、問題があるか否かは、生前に整理して把握しておくことを勧める。蓋をあけるまで誰も知らないでは話にならない。確りと計画を立てて終活に取り組んで欲しいと願う。