最近ではお墓を必要としない様々な葬送が増えている。
なぜ増えてきたのか、それは低価格であることは勿論、故人の生前の意思を反映出来ることにあるだろう。
注目をあつめる宇宙葬
故人がお墓に入るのではなく、「樹木葬」として弔うことや、海や川などへの散骨を望むケースも増えている。
中には自分の生まれた日本ではなく、生前故人が好きだった海外の土地への散骨を行うサービスや、遺骨を花火に混ぜて夜空に打ち上げる葬儀の方法なども出現し(火薬に故人の遺骨を混ぜ、夜空に向けてドンと打ち上げる「花火葬」って?!参照)、「葬る」という行為そのものが本来の「遺体や遺骨を墓などにおさめる」という言葉の意味を越え、多種多様化しているように思われる。
そんな中、故人をそもそも「地球」ではない場所に葬るサービスがあるのをご存じだろうか。
それが、故人の遺骨を宇宙空間に散骨する「宇宙葬」である。
宇宙葬の方法とは?
宇宙葬とは何らかの方法で遺骨を宇宙空間に飛ばし、それをもって死者の供養とするものであるが、方法はいくつかある。
まずは粉末状にした遺骨をロケットに搭載し、宇宙空間へと送る方法である。
打ち上げられた遺骨は衛星とともに宇宙空間を周遊する軌道に乗せられて地球の周りを回ったのち、大気圏に落ちて燃え尽きる。
すなわち、最後は「流れ星」になるのである。
ロケットの打ち上げは日本国内ではできず、現在このサービスを行っているアメリカの企業に委託して打ち上げられる事になる。
そのため、打ち上げるのにかかる費用は現在日本円で約20万円からとなっており、打ち上げを見学したり、現地でのセレモニーに参加する費用の他、アメリカへの渡航費も多くの場合別途自己負担となる。
これに対し、日本国内でより簡単な方法で受けられるサービスがバルーンを使用した宇宙葬である。
バルーンに粉末状にした遺骨を入れて成層圏に向けて飛ばし、そこから宇宙空間に向けて散骨する方法で、特別な施設や設備が必要なロケットとは違い、周囲にビルや高圧線などの障害物ある場所や航空機の飛行を妨げる恐れのある場所などでなければ基本的にどこでも飛ばすことができる。
打ち上げの立ち合いを行う際に海外まで渡航する必要がなく、さらにペットと一緒に打ち上げる事もできるなど、より身近な場所で気軽に行いたい方にお勧めな方法である。
「宇宙葬」の扱いは基本的に「散骨」
宇宙葬においてはしばしば「宇宙空間に埋葬する」という表現がされている。
だが、正しくは遺体・遺骨を埋葬する行為について定めた「墓地、埋葬等に関する法律」における「埋葬又は焼骨の埋蔵」にはあたらない。
そのため、ロケットに搭載して宇宙空間に送る場合であってもバルーンに搭載する場合であっても、自然葬の一つである「散骨」の扱いとなる。
すなわち、遺骨を宇宙に送るという壮大な弔いの方法ではあるが、定義上は海や川、山野に遺骨をまく行為と同じ扱いなのである。
これについては法務省の見解において「葬送の一つとして節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪には当たらない」とされており、法律上制限された行為ではないという見解が示されている。
ただし、海外では遺灰を搭載した月探査機が月面に衝突し、これをもって故人が「月に葬られた」ものと見なされた例や、将来的に「月面葬」を行う事を発表した企業などもある。
近い将来、地球以外の天体への埋葬が広く行われるようになれば「宇宙葬」の定義も大きく変わってくる可能性がある。
故人が還るべきは大地なのか、それとも宇宙なのか
古来、日本人は死んだ者は土に還るものとされていた。
そのため、今でも墓は土の下に作られ、多くの場合遺骨は地面に埋葬される。
しかし、そもそも我々が暮らす地球の始まりは宇宙の起源である「ビックバン」にさかのぼる。
すなわち、生命の元となったものは皆「宇宙」から来たものとも考える事が出来るのだ。
最後は自分の遠いルーツである宇宙空間へと戻っていきたい。
そんな考え方も、これからはありなのかもしれない。