「ハイビスカス」といわれてあなたは何をイメージするだろうか。
多くの方がイメージするのは「南国」、「夏」、「ハワイ」などのポジティブで華やかなイメージだろう。
また、近年ではその栄養価が注目され、ビタミンCなどを多く含んだ「ハイビスカスティー」は美肌効果のあるハーブティーの代名詞的存在ともいえる。
しかし、このハイビスカス、実は沖縄では何と「墓の花」と言われているのだ。
沖縄に自生するハイビスカス「後生花」
「ハイビスカス」と呼ばれる花は野生種・園芸種含めて世界に約5000種以上存在する。
沖縄に自生するものはその中で18種類ほどあるが、その中で代表的なのが「ブッソウゲ」と呼ばれる種類だ。
ブッソウゲは漢字で「扶桑花」、「仏桑華」と書き、沖縄では「後生花(グソーバナ)」や「赤花(アカバナー)」、「パナギー」「グショークヌパナ」などとも呼ばれている。
古くから沖縄では故人の死後の幸福を願い、ブッソウゲを墓に供えたり、また墓地に直接植える事も多かった。
そのため、沖縄では伝統的な墓である「亀甲墓」の傍で大きな茂みになったハイビスカスが一年中花を咲かせている光景がよく見られる。
後生花の「後生(グソー)」とは、沖縄の民間信仰(琉球神道)において死後の世界を意味し、故人は亡くなってからも生きている時と同じような生活をするものと考えられている。
このように沖縄地方では「ハイビスカス=墓・死者の花」というイメージがあり、本州などに自生する「ヒガンバナ(彼岸花)」などと同様に忌み嫌う人も多い。
また、地域によっては慣習的に墓に咲くものを「グソーバナ」、それ以外の道端などに咲くものを「アカバナー」と区別して呼んでいる場合もある。
「ハイビスカスティー」のハイビスカスと沖縄の「後生花」の違い
「ハイビスカス」はアオイ目アオイ科フヨウ属の植物を広く含んでいる。
その中で、沖縄の「ブッソウゲ」は熱帯性の低木に育つ樹木の一種であり、長いものでは20年以上の寿命がある。
これに対してハイビスカスティーに使われる「ローゼル」は一年草または多年草の野菜に近い種類で、花も一般的に認識されているハイビスカスよりも野菜のオクラに近い形をしている。
ブッソウゲがほとんど実をつけないのに対し、ローゼルは濃い赤色の果実をつけ、これをハーブティーやジャム、ゼリーなどに利用する。
ローゼルの栄養分は主にクエン酸、リンゴ酸、ハイビスカス酸などの酸味成分のほかに、ビタミン類やカリウム、アントシアニン、ポリフェノールなどである、美肌効果や利尿作用、また疲労回復効果があるとされている。
「墓の花」とされている意外な花
ハイビスカスのほかにも、世界では意外なものが「墓の花」「死者の花」とされている事がある。
例えば園芸用として親しまれ、公園の花壇などにもよく植えられている「マリーゴールド」はメキシコでは「死者の日」と呼ばれる11月1日、2日(地域によっては10月31日から)の期間に墓や祭壇に供えられる。
また、日本でも葬儀の祭壇や仏花として用いられる白いユリの花はヨーロッパの一部では死者に贈るもの、または古くから先祖を敬う花とされ、女性に贈ると嫌われる場合がある。
地域や時代、流行などによって花はいろいろな意味合いを持って利用されてきた。
美や健康のために毎日ハイビスカスティーを飲む現代の人々を見て、沖縄のご先祖様達は目を丸くしているかもしれない。