父親が長い闘病生活の末に亡くなった。遺族は、母と三人姉妹の真ん中であるわたしと、姉と妹の一応4人である。介護もそうだが、葬儀から相続にかけても、介護のとき以上にお役所手続きがたくさんあるのだ。
出生から現在に至るまでの戸籍が必要!
こういう場合、おのずと役割分担が自然とできあがっており毎回貧乏くじをひくのは決まって、わたしであった。なんでも人任せでまったく腹が立つ。娘が来年大学受験を控えている忙しいこの時期に、である。
父の全財産である、両親が住んでいた家と土地および銀行の預金については母親に相続してもらうことが、かなりまえから家族全員で決めていた。手続きに必要な「遺産分割協議書」のもネットで調べてあり、なんとかなりそうだと、たかをくくっていた。
ところが、両親の住民票がある役所の戸籍係の説明を聞き、これが大きな間違いであることを知らされた。つまり、父の相続人を確定するために、その証拠として父が生まれた時から死ぬまでの戸籍謄本のコピーが不可欠であることがわかったのだ。めんどうなひとは司法書士や弁護士に頼むらしい。しかし、こちらはそんな金銭的余裕はないので、相続の登記でさえもあわよくば自力でやるつもりでいた。
戸籍を見ると、見知らぬ名前が…
父の田舎の本家の役所へ行かねばならない。郵送でもよいらしいが、どうせ手続きに必要なお金は姉や妹と折半するなら東北の片田舎まで旅行することに腹をきめたのだった。
ちなみに日本の戸籍は、いままでに2回大きな法律が改正あったらしい。父の出生が記載されていた戸籍は、本家の家長を筆頭とする正式には「改製原戸籍」、通称は「ハラコ」あるいは「ハラコセキ」と呼ばれるものである。コピー代もばかにならない。この分厚いコピーをかばんにしまい、帰りの電車の時刻表を気にしながらも「ようやく終わった」との安堵感とともに役所を後にしたのだった。
ところがである。終わっていなかったのだ。この「ハラコセキ」を役所で詳細に調べてもらうと、なんと認知子つまり隠し子(?)が約一名記載されていたのだ。
「珍しいことではありませんよ」と戸籍係に変な慰めかたをされた。
その後の相続の手続きは面倒であったことはいうまでもない。
まさに「ハラコセキ」ならぬ「ハラタツコセキ(腹立つ戸籍)」であった。