近年散骨が注目を集めているという。散骨とは故人の遺骨を墓に埋葬しないで、細かく粉砕してから海や山にまくことだ。散骨の場合だと故人を偲ぶことができる墓がないため、供養にならないのではないかとも考えるが、墓終いのことも重ねて考えると別の意味も見えてきた。今回は散骨について触れてみたい。
散骨が注目されている理由とリスク
散骨が注目を集める原因は、様々な媒体で取り扱われている。葬儀の概念の多様化や、少子高齢化による墓守の後継の確保が困難となったことが背景にあるものと考える。かつて遺骨をそのまま海や山にまくと、犯罪になる可能性が指摘されたことがあった。それは刑法第190条「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。」にある遺棄に抵触するものと見做されたからだ。
しかし1991年に某団体が法務省に確認したところ、葬送を目的として節度をもって行われた散骨には違法性はないという見解を示したとされる。ただ、当該見解を鵜呑みにすることはできないのではないだろうか。というのも山で散骨する場合だと山の地主や周辺住民とのトラブルが懸念されるし、海の場合(河川も含む)であっても港湾施設や漁場、魚介類の養殖場周辺でも同様なトラブルが懸念されるからだ。確かに節度をもって散骨しても、遺骨をまくという行為自体に忌避感があるのは否めないのかもしれない。
散骨を規制する条例が全国に増加中
調べを進めていくと、2005年(平成17年)に北海道長沼町で、散骨を規制する条例を定めたことが分かった。理由は散骨地の周辺住民とのトラブルと農産物に対する風評被害を避けるためとされている。この条例の制定を嚆矢として、長野県諏訪市、埼玉県秩父市、静岡県熱海市が同様の条例を制定している。今後も同様の条例を制定する地方自治体は、増加する可能性がある。
散骨のメリット
マイナス面ばかり見てしまったが、プラス面としてはどうなのかというと、筆者としては一番気になる墓終いとの関連だ。墓終いの理由も様々だが墓守の後継が居ない、若しくは負担を掛けたくないといったところだろう。
墓を撤去し、墓石を処分した後に遺骨を別の墓に埋葬するか、共同墓地に埋葬するか判断しなくてはならない。そうなると、多額のお布施や埋葬料が必要となる。だが、散骨ならば業者によって差があるものの、再埋葬するよりも大きな負担にはならないと考える。
墓がなくても供養の代用はいくらでもある
供養の有り方についても考えてみた。冒頭にて墓が無くては故人を偲ぶことができず、供養にならないのではと書いたが、ほぼ毎日自宅にある仏壇に合掌して故人を偲んでいる。つまり、墓が無くても故人を偲ぶことができるわけだ。そうなると、墓終いの際に再埋葬を考えるよりも、後の負担を軽減させつつ故人を偲ぶことができる散骨がかなり意味のある選択に見えてきた。
散骨という選択肢が増えたことについて好意的に捉えることができたが、課題も残されている以上、慎重に検討してみるべきであろう。専門家にも相談しつつ終活を進めていきたいと考える。