禁忌とは?
タブー。やってはいけないこと。ある習慣的に行われる行為に対して、忌み嫌い、それらを禁止することを禁忌といいます。
例えば、仏教の一部の教えでは肉食が禁止されています。これは肉食禁忌と言われるものです。
医学などでは、医薬品などを投与することで症状を悪化させてしまったり、深刻な副作用を引き起こすことのないよう治療自体を避けて行わないようにすることをいいます。
社会のルールの中で人と関わって生きている以上、さまざまなルールを守りながら生きていかなければいけません。そしてルールがあるということはそこには必ずタブーも存在します。
その中でも葬儀は、私たちにとって最も大切な行事であるもののひとつであるにも関わらず、その仕来りやひとつひとつの行動の意味を正しく理解していないがために、マナー違反をおかしてしまっていることが意外と多くあるのです。
では葬儀のマナーとタブーとはどういったものがあるのでしょうか。
お悔やみの連絡があってすぐ駆け付けた場合ですが、この場合は喪服を着ていく必要はありませんし、お香典などの準備も必要ありません。大慌てで訪問するわけなのですから、準備万端であるような印象を与えてしまうのは、かえって遺族の方々に失礼となります。
葬儀に参列する場合は、もちろん基本的には黒い衣装を身に着けます。この時、美容院で髪のセットや、派手な化粧、また毛皮製品は殺生を印象づけるもとしてタブーとされています。
香典袋に描かれた花の絵についても決まり事があります。仏式葬儀の時に使用する香典袋には蓮の花が描かれており、キリスト教葬儀に使用する香典袋には百合の花が使われます。
気を付けなければならないのは、お悔やみの際に述べる言葉にも存在します。禁忌の言葉は結婚式などにもありますが、やはり不幸を思い起こさせるような言葉や不幸が繰り返されることを連想させる重ね言葉は特にタブーとされています。
例えば「苦」「迷う」、重ね言葉は「重ね重ね」「またまた」「さらに」などがあります。
葬儀でのタブーとしては、僧侶が読経を行っている途中で席を立つことはタブーとされています。
また子どもを亡くした親は火葬場に行くことはできません。しかしこれには、過去の辛い思いをこれ以上思い出させないための配慮とも言われています。このようにタブー、いわゆる禁忌には、もともと社会で人と人がより良い関係を築いていくための思いやりの心から生まれたものが多く存在していているのです。
禁忌の豆知識:生け花の禁忌
生け花の世界でも、花を生ける時にしてはならないタブーが存在します。未生流では禁忌三十六ヵ条を定め厳しく禁じています。
禁忌が定められた理由は、昔、混沌としたこの世が天と地として分かれたとき、清浄で美しい気は上昇して天となり、濁った気は下降して地上に残されてしまったといいます。その濁った気は大地に染み込んで、地気の濁りとして存在しています。大地に生まれ育つ草木には、この地気の濁りが生まれながらにして内在されているのです。
これは本来その草木が持つべき姿ではないと考えられており、これを取り除いて美しい姿に戻すことで、清いものへと昇華させることができるのです。つまり醜い禁忌に触れるものを、花を生けることによって昇華させ、本来このものが持つ美しい姿に戻してあげるというものなのです。
そしてこの考えには、我々人の中にも醜いものが内在しており、その心をいかに浄化させ、自分の本来の姿に戻すことができるか、という真理に近づく模索への道に繋がっているように感じられるのです。