仏衣とは?
納棺時、ご遺体に着せる白い着衣のことをいい、死装束のひとつです。白い衣を身にまとうので白装束とも呼ばれています。仏教の影響から浄土へ旅立つための衣装とされ、巡礼者を模しています。浄土真宗は冥土には行かず、死んだのちすぐに浄土で仏様となるため、仏衣の決め事を採用する必要はないとされます。
仏衣のひとつに、さらしで作られた着物「経帷子(きょうかたびら)」があります。経帷子は、おくみ(前身ごろの合わせ)を通常とは逆の、左前にして着せます。これは相手から見て左前になるよう、右前合わせとなります。こうした「逆さごと」は、死と現世の領域を隔てるための演出で、経帷子の紐も縦結びの逆さごととなります。
経帷子のほか、頭に三角頭巾、足は白足袋をはかせ、すねの部分に脚絆(きゃはん)、手の甲は手甲(てっこう)を身につけます。この時にも逆さごとを用い、左と右を逆にする、裏返して着用することもあります。これら仏衣が真っ白なのは、赤=誕生を意味することの逆さごとと考えることもできます。このほか三途の川を渡る際の六文銭(現在は印刷物)を、首から下げる頭陀袋(ずだぶくろ)に入れ、故人の旅路が安らかなものになるよう持たせます。これら一式を仏衣といいます。
仏衣の豆知識:宗教にとらわれない現代の仏衣
真っ白な仏衣姿にも変化が訪れています。故人が気に入っていた衣装を仏衣の上からかけたり、着用するケースが増えています。洋服ですと、仏衣とのバランスがとれないため、頭陀袋など故人のかたわらに置くこともあります。仏衣は故人の旅立ちを考慮していることに対し、愛用品を着せてあげるのは生前の故人を思う遺族の気持ちです。
仏衣にこだわらない価値観を持つ、また仏教ではない場合は、白装束にこだわる必要はありません。愛着のある衣装、女性なら「エンディングドレス」の選択肢もあります。一見するとパーティのような華やかなドレスもあり、インターネットでも販売されています。終活の一環としてドレス選びを行う人もいるなど、注目を集めています。また子供や男性用の衣装も多く見られるようになり、これらは着やすいよう作られているのが特徴です。
和服にしても真っ白ではなく刺繍が入ったものや、淡い色の生地を用いた着物など、従来の仏衣とは異なるもののフォーマルな印象があります。和服にしろドレスにしろ、いずれも故人を送るための「エンディングドレス」はデザイン性だけでなく、着せやすいことはもちろん、痩せすぎの印象を与えないよう、体の線が出ないゆとりをもたせた設計を採り入れています。仏衣は故人が最期に着る衣装であるとともに、参列者にとっては最後の姿となるのです。