納棺師とは?
納棺師とは、亡くなった人を棺に納めるために、遺体の身体を清め、死に装束を着せ、化粧を施すなど、それら一連の作業を儀式的に行うことを職業とした人のことです。また関連の商品販売も行っています。他に湯灌師、復元納棺師と呼ばれることもありますが、特に決められた呼称はありません。映画で広くその存在が知れ渡るようになりましたが、「おくりびと」というのが、この納棺師のことを指します。
納棺師の主な仕事とは、遺体の見栄えを整えることです。具体的には、亡くなった人の全身をきれいに拭き、顔そりをし、髪を洗います。遺体の腐敗の進行を抑えるために、体や内臓部分をドライアイス等で全体的に冷やします。次に白い衣装に着替えさせ、化粧を施して穏やかな表情に整えます。
これらの作業を儀式的に執り行うのです。とは言え、これらは儀式的な意味合いよりも、遺族が亡くなった人との最後の別れの挨拶をするために、粛々と行われるもので、どちらかと言うと精神的な意味合いの方が強いと考えられます。
亡くなった人の体を、ゆっくり時間をかけて清め、真っ白できれいな衣装を身につけ、美しく整えてから、あの世に送り出す。この優美な作業を遺族たちも間近で体感することで、悲しみもゆっくりやわらいでいくといった効果があるようです。
もともとは、1954年の青函連絡船洞爺丸沈没事故がきっかけで、函館の住民たちが海岸に流れついた多くの遺体の処理を手伝った際に、仕事として成り立つことに気がついて始めたとのこと。歴史まだ浅く、仏教的な意味合いなどの関連はないようです。
納棺師の豆知識:納棺師になるには?
映画「おくりびと」で納棺師という職業が、世間に広く知れ渡るようになりました。遺体に触れる仕事というのは、汚らわしいとか忌まわしいなどといった偏見をもたれやすい職業でもあります。それが映画のヒットにより見直されたのも確かなようで、最近は納棺師を目指す人も増えているようです。
納棺師になるには、特別な資格は不要です。また学歴も問いません。年齢や性別などの制限もなく、なりたいと思えば誰でもチャレンジできる、広い門です。
ただし、入社したあとの研修では、その分の知識や技術をしっかり学ばないといけませんので、どこの職場でもこれからが厳しいようです。
また専門学校で、葬儀関連のコースが用意されているとこもあるので、そこで専門的な知識や技術を習得したあとに、納棺師を目指すという方法もあります。
納棺師という職業は、ただ知識が豊富だったとしても技術が完璧だったとしても、遺族たちの悲しい気持ちの理解ができていないといけません。葬儀という特殊な場所と時間の中で、遺族とどうやって寄り添えるかということが大切なのではないでしょうか。