鳥葬とは?
鳥葬とは、チベットやインドで現代も行われている葬儀の方法で、野山に遺体を置き、野鳥に食べさせるというものです。インドのゾロアスター教には鳥葬をするための「沈黙の塔」という石積みの施設が存在しています。日本においては刑法190条の死体損壊罪にあたるため、鳥葬をすることはできません。
鳥葬の豆知識:チベット仏教の葬送
鳥葬が行われるチベット仏教では、人が亡くなったとき、経済的・社会的な地位によって異なった葬儀の方法がとられます。主な方法は5つあり、塔葬、土葬、火葬、水葬、鳥葬で、一般的に多く行われているのは鳥葬です。鳥葬をする際には遺体を斧で切り刻み、野生のハゲタカなどの鳥についばませて遺体の処理をします。山の中腹ほどに作られた石台の上に刻んだ遺体を乗せて、酥油茶というお茶の葉を焚くことによってハゲタカを呼び寄せます。これは古くから伝わる伝統的な習慣であり、そうすることによって遺体をついばませるのです。
鳥葬において遺体をついばむハゲタカは、神の使いの鳥とされています。神の使いの鳥であるハゲタカに綺麗に遺体を食べられる人は、生前に悪い罪がなかったとされます。反対にハゲタカが肉を残せば、死者の生前には罪が残っていると信じられています。そのため、遺族は鳥葬の際にきれいについばんでもらえるよう、遺体の処理を入念に行います。
通常であれば鳥葬する遺体は、亡くなってから3日後ほど家に安置し、腐臭を発する4日後に鳥葬によって処理されることとなります。その処理とは、背中から網の目状に死肉を断ち切り、四肢を切断して肉をこそげ落とします。骨は細かく砕いてチベット人の主食である糌粑(ツァンパ)と混ぜられ、ハゲタカが消化しやすいようにします。
基本的には男性と女性の遺体は鳥葬するときに別々の場所に置かれることとなります。その際女性の遺体のほうが肉質の柔らかなためかハゲタカが食べやすいようです。そのため、同日に男女の鳥葬が行われるときには、男性のほうを先にハゲタカに食べさせることが多いのです。
輪廻転生の考えかたが根付いているチベット仏教では、ハゲタカに綺麗に食べられた魂は昇天し、輪廻転生の輪に向かうとされています。また、綺麗に食べられることがなく、死肉が残ってしまった場合には、僧侶に読経してもらうことによって魂が昇天し、輪廻転生の輪に加わると考えられているのです。輪廻転生の考え方が根強いチベット仏教においては、肉体はこの世で生きるための仮の住まいのようなもので、魂の入れ物に過ぎませんが、葬儀は当然家族全員が見守ることとなります。