遺骨とは?
遺骨とは亡くなった人の骨のことです。主には火葬の後に残った人骨を指し、かつて命があったことに敬意を払い「お骨」や「ご遺骨」とも呼びます。数えるときは一柱(ひとはしら)、一体(いったい)と言います。また何らかの理由で白骨化した人骨のことも遺骨と言います。
地域によっては前火葬や骨葬と呼ばれ、葬儀の前に火葬をすることもありますが、日本国内の多くの地域は、葬儀の後に故人は火葬されます。その後残った遺骨を箸で拾う「骨上げ」という作法に則り、骨壺に納めます。遺骨のなかでも喉仏の部分は正確には骨というより軟骨ですが、形状が胡坐をかいた仏様のお姿そっくりなため、古くから大切にされてきました。ですから骨上げの時に故人の喉仏を拾うのは骨上げの一番最後に、喪主と近しい親族の二人だけで行うと決められています。骨上げが終わると遺骨は骨壺に納められ、納骨堂や墓地などに埋葬されます。
具体的な骨上げの作法としては、火葬が終わった後、係の指示に従い参列者は遺骨を囲んで立ちます。喪主の立ち位置は故人の頭側です。この際喪主は骨壺を持ちます。その後は故人と関係の深い順から、故人の足から上半身に向かって遺骨を拾い上げていきます。拾い上げる際の箸は係の人が手渡すことが多いようです。参列者全員が二人一組になり、箸で遺骨を拾い上げて骨壺に納める所作を最後の参列者になるまで続けていくのですが、最後に遺骨が残っていた場合はもう一周します。再び関係の深い遺族から順に、遺骨がなくなるまでこの所作を続けます。
また骨壺に遺骨を納める際は、自分の箸から直接入れてはいけません。必ず箸で遺骨をつまんだまま他人の箸に移し、箸から箸という形で納めてもらいます。この動作を「箸渡し」と言い、食事の際の箸使いでマナー違反と嫌われる所以でもあります。
遺骨の豆知識:生まれ変わったらダイヤモンドになる
日本人にとっても遺骨は大切なものですが、その所有権をめぐって遺族間の争いが起きることがあるのも事実です。裁判になった場合、遺骨を単なる「もの」とするか否かで、「もの」について適用される所有権への解釈が変わってしまいます。裁判はともかく、心情的にはかつて命を持っていた遺骨を「もの」と見るには抵抗があるでしょう。
遺骨こそが故人の魂をもっとも感じられるのではないか。その温もりを肌身離さず感じたい。そう思う人は多く、近年は遺骨をアクセサリーなどに加工する専門の業者も増えています。遺骨の一部や遺灰を石に加工したり、金属に埋め込んだりと素材やデザインも様々です。また自分の手で遺灰を入れられるカプセル型のものもあり、価格も1万円程度から、あるいはオーダーメイドで好みのデザインに作ってくれる業者もあるようです。
なかでも遺骨をダイヤモンドに加工する技術は高度なものです。天然のダイヤモンドは、地中の深い所で約2000度の高温と長い年月をかけて圧縮された炭素が原料です。鉛筆や黒鉛になってもおかしくないものが、地中のマントル部で高温圧縮され、やがてマグマの噴出とともに吐き出され、高速で冷却されて原石になってようやく磨かれ、あの輝くダイヤモンドになるのです。
天然の炭素がダイヤモンドになるまでの年月はおよそ数億年。その生成も幾多の偶然が重ならないといけないのですが、スイスに研究所を持つとある会社では、自然界で本物のダイヤモンドが生まれる過程を再現できる専用の機械があります。特別な技術で遺骨から徹底的に不純物を取り除き、炭素だけを抽出したものを結晶化させることができるそうです。機械を使って遺骨がダイヤモンドになるまでには数週間程度かかるとのこと。その後専門の職人の手で美しくカットされ、アクセサリーに加工されます。
ちなみにその会社が手掛けるダイヤモンドは、遺骨に残った微量元素の性質によって無色から鮮やかな青までバリエーションがあり、まるで個性が宿ったかのような色合いになるそうです。