魂抜きとは?
魂抜き(たまぬき・たましいぬき)とは、お墓や仏壇・位牌を処分する際に行う仏教の儀式です。宗派によっては「お性根抜き」「閉眼供養」とも。
魂抜きは何らかの事情でお墓を解体する「墓じまい」や、仏壇などを処分する際だけでなく、新しくお墓を作り直す・他の墓地などにお墓を移動する、あるいは仏壇を買い換えた際にも必要となります。よくお墓や仏壇には先祖の魂が宿っていると言われていますが、これはそもそも使う前に、魂を移し入れる儀式を行っているからです。ですから処分する際には魂を抜いてただのモノに戻し、新しく使うものには改めて魂を移し直す儀式が必要なのです。
具体的な魂抜きの方法や流れは以下の通りです。まずお寺などに魂抜きを依頼します。本来ならば檀家になっている寺院であるのが条件ですが、菩提寺がないといった場合、現代では僧侶を手配するサービスに依頼したり、仏壇やお墓を買い換えた仏具店や石材店などから専門の業者を紹介してもらうケースもあるようです。また墓地によっては離檀料や管理者の許可が必要なこともあるので、事前に確認しましょう。
実際の魂抜きは、家族・親族のみで行うのが一般的です。日時が決まったら早めに親族に連絡しましょう。その際はドレスコードを記載した方が親切です。魂抜きの服装に特に決まりはないため平服でも問題ありませんが、後のトラブルを防ぐ意味があります。また僧侶に渡すお布施・お車代(交通費)・御膳料(食事代)が必要です。相場は合計して5万円程度と言われています。その他、お墓にはお供え物をします。
魂抜きの豆知識:人形にも魂が宿る?
時々魂抜きを、法要の一種のように説明することがあるので混同されがちですが、本来「法要」とは僧侶にお経をあげてもらうこと自体を指します。ですから魂抜きは初七日や四十九日などのタイミングで行うものではなく、お墓などの処分が決まり準備ができた「その時」に行います。
ところで、魂抜きの対象は何もお墓や仏具だけではありません。よく「お焚き上げ」といって故人の使っていた品物などを処分したり、人形供養をするお寺がありますが、あれも魂抜きと同じ考え方なのです。仏教や神道といった宗派を超えた普遍的な概念として「モノに持ち主の魂が宿る」というものがあります。
とあるお寺の住職は人形供養をする理由について語りました。「自分がある日突然、何の前触れもなく捨てられたらどう感じるか。不安や怒りが湧くだろう。そしてその気持ちを抱いたままゴミとして圧縮される。それは恐ろしいことだから、人形を捨てる前には魂を抜いてあの世に送ることが必要だ」と。
人形に魂が宿る……というとオカルトや怪談のような印象を受けますが、ある意味では本来ただのモノが心を持つほど持ち主に大切にされていた証でもあります。それならばきちんとお別れしたほうが、どちらも平穏な日々を保てるのです。