出棺とは?
出棺とは、葬儀が終わった後に、斎場などから故人を納めた棺を火葬場まで運ぶことです。あるいは棺を乗せた霊柩車を見送る儀式でもあります。
一般的な出棺の流れですが、まず読経や焼香など葬儀が一通り終わった後、「納棺」をします。これは参列者が祭壇などに飾られた花や思い出の品などを、故人の周りに添えていくセレモニーです。ただし、棺に納められないものもあるので注意が必要です。燃えにくいものや火葬の際に有害物質を発するもの、火葬場の炉を壊す危険性のあるものはいけません。例えば酒瓶やゴルフボール、香水、多量のタバコ、入れ歯、眼鏡などです。おおまかに言って不燃物、樹脂や石油製品、化学物質が含まれるもの、膨張して爆発する恐れのあるものは避けましょう。また故人の体内に埋め込まれた金属、ペースメーカーなども良くないと言われていますので、事前の確認が必要にな場合があります。基本的に花や紙類など燃えるもの以外は墓地に埋葬します。
納棺が終わると、親族が棺に釘を打ちますが、地域によっては打たない所もあるようです。
最後に棺は霊柩車に納められ、喪主による挨拶があります。内容は葬儀が無事終了したという礼と、参列者に感謝する故人の気持ちを代弁したごく短いものです。故人の生前のエピソードなどを加えても、30秒から1分程度にとどまる簡単な挨拶がほとんどです。
喪主の挨拶を終えて、クラクションなどの合図で霊柩車が静かに動き出します。このクラクションですが、関西や北陸の一部地方では、かわりに茶碗を割ることで出棺の合図にすることもあります。この際、茶碗は故人が生前使っていたものを割ります。これは故人がこの世に未練を残さないための儀式だからです。この世に帰ってきても、あなたの茶碗はないからご飯は食べられません、だから成仏してくださいという意味が込められているのです。
また、隣近所に住んでいて出棺だけの見送りをしたいという場合、特に礼服に着替える必要はないようです。よほどラフな格好でない限り普段着でも構いませんが、気になるようならジャケットやワイシャツ、ブラウスなど色味の抑えたものを着ると、違和感も少ないでしょう。
出棺の豆知識:著作権の問題で好きな音楽で出棺できない?
近頃は「音楽葬」といって、お経でなく故人の好きな音楽などを、葬儀の場に流すことも増えているようです。この音楽葬は、親族どうしで曲を選ぶことで故人を偲ぶことにもなり、また参列者にとっても、故人の生前をより思い出せるひと時になるようです。そのため音響設備のある斎場や、クラシックの演奏家を手配するなど、音楽葬に特化した葬儀社もできてきました。
しかし場合によっては、故人が好きな演歌や歌謡曲などを流せないことがあります。
日本の著作権法では、作者の死後50年を経ていない作品を営利目的に使う場合、作品の著作権を所有する団体に著作権料を支払う義務があります。葬儀社は営利を目的とする会社なので、そこで昭和の懐メロなどをかけるとJASRACなどの管理団体から著作権料を求められます。そういった事情があるため、葬儀社によっては曲をかけること自体を断られることもあります。
ただ作詞・作曲者が大昔に亡くなっているクラシック、作者不詳のもの、故人が趣味で作曲したものなどについては、かけても大丈夫というケースがほとんどのようです。
アメリカの黒人たちが、仲間の出棺に隊を組んで演奏したという曲「聖者の行進」などは、ジャズの好きだった故人に向けて選ばれることもあります。こちらは元来、作者不詳の「黒人霊歌」と呼ばれる曲でした。出棺の時には悲しげな演奏が、戻ってくると何故か陽気なリズムに変わっているこの曲、これもまた見送りの形かもしれません。