祭祀財産とは?
家系図や、ご位牌、仏壇仏具、お墓といった、先祖代々に渡り受け継がれてきたものです。
財産といっても、遺産相続される財産としての対象にはなりません。したがって「祭祀財産」を受け継ぐ場合には、相続の問題とは違い、正式な遺言書は特に必要とせず、生前の口約束でも良いとされます。日本における大半を占める例としては、故人が残した兄弟間の長兄が受け継ぐというのが一般的なのでしょう。女系のみの場合でも長女というかたちになるのでしょうが、候補となる者がいない、或いは決まらないという場合には家庭裁判の決定に従うことになります。
やはり「祭祀財産」を継承する者は、故人が亡くなるにあたってのお通夜、葬儀から埋葬、そして、その後の法要・法事などを主宰する者となるのが慣習であり、現代の人々にとっては、継承することに対して一歩退いた考えを持っているケースも少なからず存在するようです。
遺産相続では、誰が相続するか、どういう割合で相続するかで遺族間での協議となり、泥沼化した場合には決着を家庭裁判所にまで持ち込むこととなり、調停分割・審判分割というかたちで争われるのですが、同じ継承される財産でも「祭祀財産」では、誰が受け継ぐかを押し付け合う意味で、家庭裁判所に判断を委ねる場合もあるのです。
祭祀財産の豆知識:処分可能な継承者
慣習の考えや、家庭裁判所の決定で「祭祀財産」の継承者になったとしても、その後の祭祀を行うことや、法要等の主宰となることは絶対的な義務ではないのです。継承された「祭祀財産」も、その後どのようにするかは、継承者本人次第であり決まりはありません。たとえ処分してしまおうと構わないのです。
一見すると「祭祀財産」を処分するなどという行為は非常に悲しいことのように感じられます。しかし、これも遺族、親族間でこのような継承者を選ばざるを得ない、という背景があるのでしょう。皆が継承を拒む中、自分が継承者になってしまったなど、故人や遺族の関係性が希薄なケースがこれにあてはまってしまうのかもしれません。
法的に問題がないとはいえ「祭祀財産」を捨てる行為とは、尊敬すべきご先祖様を捨てる行為と同じであり、ひいては、自らの心さえも処分してしまう行為なのではないでしょうか。
豪華な祭祀や法要を行ったり、豪華な祭壇や仏壇を備えたりする必要などないのです。自らの人生に、ご両親やご先祖様、大切な人の「祭祀財産」をそっと傍らに置いておく。それだけで心のこもった残りの人生を歩んでいけるのではないでしょうか。