しきみとは?
樒。しきみ。しきび。俗にはハナノキ、ハナシバ、コウシバ、仏前草と呼ばれています。マツブサ科シキミ属の常緑広葉低木・小高木で3月頃になると小さな黄色い花を咲かせます。種子は中華料理などによく使われるスパイスの一種である八角によく似ています。ただし、シキミは花、葉、実、茎、根の全てに強い毒性があり、口にすると死亡する可能性もあります。実際にも確かに事故が多く、そのため特に毒性の強い実については、毒物及び劇物取締法によって植物で唯一、劇物に指定されています。中毒の症状としては、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、ひどいものでは意識障害、最悪は死亡となっています。
しきみの語源は、四季を通してずっと美しさを保っているということから「しきみ」や「しきび」と言われるようになったという説や、実形が平べったくペタンとしているため「敷き実」と呼ばれるようになったという説。また毒性が強いために「悪しき実」と呼ばれていたものが、仏との縁によって「悪」が取れ、「しきみ」となったという説もあります。
しきみは古くからお寺の境内や墓地などに植えられていることが多いのは、その花の香りがとても強く、死臭を消してくれるといって重宝がられたからでした。
また空海が青蓮華という天竺にあるとされる花の代わりとして修行の際に用いたとされ、その後も仏前に供えるための花として使われるようになりました。しきみは何より年中強く美しい植物で、手に入りやすいというのも重要な要素でありました。香りも良く乾燥させた葉を粉末にして作った抹香や線香なども親しまれています。
しきみのこの毒気や香気は悪しきものから浄化する力があると信じられており、仏教などによく使われるのはそのためであると考えられています。
しきみの豆知識:関西の葬儀でしきみと言えば?
関西で樒と言えば、葬儀会場に供える花のこと。式場の玄関前などにずらずらと並んで立ててある葉っぱばかりの飾り物のことを言いますが、これは関西だけに見られる常識です。他の地域では、だいたい花輪がその役割を果たしています。そしてこの辺りでは樒はシキビと呼ばれるのが一般的です。
しきみは参列者からのお供えとして送られるものなので、しきみの数が多ければ多いほど、亡くなった人の立場や地位や人柄などを一目で推し量ることができるというわけです。
しきみをするには、葬儀などを管理している町内会で申し込めば、一律に決まった金額で受け付けてもらえるような仕組みになっています。関西の方では香典を辞退して、しきみだけの受付けをする葬儀が増えてきています。
また最近では、本物のしきみは使わずに板樒や紙樒などのように板や紙に寄贈した人の名前などを印刷したものを並べるのが一般的になってきています。