多くの方がイメージする一般的な葬儀には、読経がつきものです。お経自体の意味をきちんと理解することができなくても、会場に響く声とリズムに集中するだけで、自然と荒れていた心が落ち着くのではないでしょうか。しかし、中には読経よりも音楽を使いたいと思う方もいるようです。
ありきたりは嫌という人にオススメ
私は最近、そのような方のための音楽葬というサービスを知りました。音楽葬ではクラシックの作曲家のレクイエムやショパンの「別れの曲」、パッヘルベルの「カノン」などが人気のようです。言葉は悪いですが、少々ありきたりな作品ばかりに思えます。
そこで、せっかく音楽葬をするならありきたりは嫌だと考えている方のために、他とは違う葬儀になること間違いなしの作品を二曲ご紹介します。
Gustav Holst作曲 「Ave Maria」
オーケストラ作品の「惑星」で有名なホルストが、幼少期に亡くなった母のために20代の若さで書いた作品です。8つの声部のリッチな響きがありながらも、作りはシンプルで音楽はどちらかというと爽やかです。
音楽葬で母親を送りたいという場合には、バッハ・グノーやカッチーニのAve Mariaよりも、「母への思い」が込められたホルストのAve Mariaがふさわしいのではないでしょうか。
Maurice Ravel作曲 「Le Tombeau de Couperin(クープランの墓)」
「ボレロ」でおなじみのラヴェルは、フランス近代音楽の巨匠です。Tombeauとはフランス語で墓という意味ですが、音楽用語では「亡くなった方を偲ぶ曲」という意味があり、一般的な日本語訳の「クープランの墓」は誤訳と言われています。
この作品は6曲の組曲からなり、それぞれが第1次世界大戦で亡くなったラヴェルの友人たちにあてて書かれています。彼らが生前に好んだ音楽と古典的な音楽技法、現代的な和音が絶妙に組み合わさり、芸術としても、職人芸としても完成度の高い作品です。この作品を友人の葬儀で使えば、「亡くなって『過去』になる友人も、未来を生きて行く残された者も、心はずっとひとつ」というメッセージを伝えられるでしょう。
葬儀で「伝わる」音楽を選びたいなら、作品の背景を掘り下げてみて
葬儀をテーマにした音楽、あるいは葬儀の雰囲気によく合う音楽は無数に存在します。ただ、「自らの葬儀で参列者の方に音楽で思いを伝えたい」「故人へ音楽で思いを伝えたい」という場合には、作品の背景に注目してみるのも良いかもしれません。
納得のいく音楽葬を行うためにも、「残された家族にありがとうを伝えたい」「個人の名前や顔をずっと覚えていてもらいたい」など、音楽を使う目的を具体的にし、同じ思いで書かれた作品を探してみてはいかがでしょうか。