忌中札とは?
忌中札とは、忌中であることを周囲に知らせるために貼っておくお札のことです。忌中紙ともいいます。半紙の中央に「忌中」と書き、その周りを黒枠で囲って 門や玄関に貼り出します。
家族や親族など身近な人が亡くなった際に、忌中であることを近所の人に知ってもらうために 忌中札を貼りますが、現代では単に 不幸があったことを知らせることだけを目的に貼り出されることが多くなっています。しかし、本来は「死の穢れを他のものや人に及ぼさないように 家にこもっています」というメッセージを伝えるために用いられていました。
以前 死は不浄のもの、「穢れ」として敬遠されていました。親族に不幸があったときには、その遺族まで死の穢れに触れていると考えられていました。そのため身内に不幸があった際には、周り近所にその穢れを広めないために 外出を控え家にこもっています、という意味で 忌中札が貼られたのです。死の穢れという考え方は、身内に不幸があった際に「神棚封じ」をする文化などからもうかがわれます。
忌中札の「忌中」の文字の左右などに、通夜が行われる日程や会場などを記載することもあります。
忌中札は多くの場合、四十九日の忌明けをもってはがします。しかしこれには地域差があるため、もし忌中札を貼ることになったら どうすればよいのか調べておきましょう。
忌中札の豆知識:現代における忌中札
忌中札は本来 ご近所に忌中であることを知らせるために用いられますが、近年では葬儀を自宅ではなく 専用の斎場で行う家庭が増えており、忌中札にはあまり意味がなくなってきたとも考えられます。実際に、特に都会などで 忌中札を貼っている家を見かけることも 今ではほとんどありません。
住民同士の距離が近く、繋がりが強い地方においては 今でも忌中札を貼ることは多く、その貼り方・はがし方にも若干の地域差があります。
さて、現代においては忌中札が貼られる機会が減ってきたことは前述したとおりですが、忌中札を貼りたくても貼れない、という状況も発生しています。その原因は 空き巣などの犯罪です。
忌中札は本来「自宅にこもっています」というような意味合いで使われていますが、実際に忌中札を使う時期の遺族は 葬儀の準備や挨拶などで非常に忙しく、家を空けていることが多いのです。さらには香典や葬儀のための準備金など 大金が家に置きっぱなし…ということもありえます。つまり忌中札を貼っていることで「忙しくて家を空けている」「大金が置いてある」と推測されてしまい、空き巣にとっては絶好の標的となってしまうのです。
忌中札をすっかり見かけなくなったのは、単に「意味がないから」だけでなく、「忌中札を貼りづらい環境になってしまった」こともあるのかもしれません。