贈り名とは？
おくりなは「諡」と書き、それを訓読みとして表記すると「贈り名」となります。その意味は、亡くなった人の生きた人生をたたえ、その生き方を敬うことの証明として、残された人たちによって名前を贈るというものです。
古来「贈り名」という言葉の由来として「忌み名」というものがありました。「いみな」は「諱」と書きます。そしてそれを訓読みで表記をすると「忌み名」となり、直接名前を呼ぶ行為を忌み嫌い慎むべき行いであるとしていました。これは実名を敬避する習俗によるものです。特に高貴な位の人の実名を直接呼ぶことは、失礼かつ畏れ多いことであるとされ、男子が元服すると、実名の他に「字」（あざな）がつけられその字で呼ばれることが礼儀とされていました。
この忌み名の習慣が贈り名を生み出すこととなったのです。
日本では奈良時代に、その流れが中国から入り込んで流行するようになり、その後の歴代の天皇に諡号が贈られるようになりました。また諡号を贈る役割として天皇は、大きな権限を持っていました。そして、僧侶には大師号を贈りました。天台宗を開祖した最澄には「伝教大師」を、そして真言宗を開祖した空海には「弘法大師」という贈り名が贈られたのです。
江戸時代に入ると、皇族ばかりではなく、将軍や大名などの人々の間にも次第に広まっていきました。
仏教では戒名というものがあります。仏教には人が亡くなると仏さまの弟子になるという考え方があり、そして戒名というのは、仏さまの弟子になったという証なのです。仏教の葬儀が大半を占める日本では、人は亡くなると大抵は、この戒名をつけることになります。
神道には仏さまは存在しませんので、仏さまの弟子入りをすることがないため戒名はありませんが、似たような概念として贈り名があるのです。神道でも、人が亡くなると贈り名が贈られます。贈り名が、亡くなった人の生き方に対して、敬う気持ちを込めて贈るのには、人は亡くなると魂は神の国へと帰り、その家を守ってくれる守護神へと変化するからです。つまり亡くなった人は神さまになるため、自ずと敬う気持ちが生まれるのです。
贈り名の豆知識：贈り名の付け方
贈り名は生前の名前の後ろにつけられるのが一般的です。男性は支配するという意味の大人（うし）、女性は戸口を支配する者という意味の刀自（とじ）です。
さらに年代別に見ると、男児は稚郎子、女児は稚郎女、青年時代は彦や姫、また老人は翁、媼という贈り名に分類されます。そしてこのあとに「命」とつけるのです。
