六文銭とは?
六文銭とは、三途の川を渡るときの船の渡し賃として、死後の世界に旅立つ者に持たせるお金です。人が亡くなると、葬儀のさいに遺体に死装束を着せて、あの世を巡礼する旅支度をさせます。死装束には、経帷子や天冠、帯に杖、脚絆、手甲、草履、編み笠、数珠など様々なものがありますが、その中の一つに頭陀袋というものがあります。
この頭陀袋は、あの世を旅するための道具を入れる袋に使用され、この中に六文銭も入れます。この六文銭は、死後の世界を旅する時に必要になると言われているからです。
現世と彼岸の間には、三途の川という名称の川が流れていますが、この川には渡し舟があります。この渡し舟に乗って、彼岸へと向かうのですが、その際の渡し賃として六文銭が必要になります。六文銭を持たない死者が来た場合、懸衣翁と奪衣婆という神様が、渡し賃の変わりに着ている服を全て剥いでしまうという言い伝えがあります。
そして、身包みを剥がされた死者は川へと放り込まれ、自力で彼岸へと向かわなくてはいけないのです。
現在では、この六文銭自体が珍しいお金になってしまいました。
現物がないので変わりに六文銭を印刷した紙を頭陀袋に入れて、旅立たせるというのが一般的になっているようです。
六文銭の豆知識:世界中で伝わる冥銭の話し
日本では、三途の川の渡し賃を六文銭といっていますが、世界各地にもこのような習慣があります。例えば、ギリシア神話ではカローンという神様が、冥府へ渡す船の船頭をやっています。この時、カローンに渡すお金は1オボロスとされています。このお金を持っていないと、すぐには船に乗れず、200年もの間船に乗るのを待たされるという言い伝えがあります。
古代ギリシアでは、この1オボロスを死者の口の中に入れて弔う習慣がありました。他にも、ヨーロッパやアジア各地、沖縄など、様々な地域でこのような言い伝えがあります。冥銭は紙銭と呼ばれ、あの世で使える通貨とされています。この紙銭を、供物として焚く事で、祖先にそのお金が届いて、あの世で使えるとされています。
沖縄では、冥銭をウチカビと呼び、供養のさいにはそれを焚いて、あの世にいる祖先に送金をしています。また、ヨーロッパでは、死者の体に冥銭を置いて、通行料を渡す習慣があります。世界各地で、死後の世界を信じ、同じような習慣があるのは不思議な事です。しかし、これは、大切な人が亡くなった先の世界でも困らないようにという、現世の人の思いが込められた習慣でもあると思います。