納棺とは?
納棺とは、ご遺体を棺に納める儀式のことを言います。
一般的に通夜の段階ではすでにこの納棺が行われているため、喪主の家族か近親者でない限りこの納棺の儀式を体験することは稀です。納棺の目的は故人をきちんと見送るための身支度をすることです。そのために死装束を着せる、白足袋を履かせる、頭陀袋を持たせたりするほか、男性の場合は髭を剃ったり、女性の場合は化粧をしたりして故人の身なりを整えます。宗派によっては故人の慣れ親しんだ服を着せて見送ることもあります。
納棺は基本的に家族全員で行います。棺の中に故人を納めたのちに、故人が愛用していた物を入れますが、金属やガラス類など、遺骨を傷めそうなものは避けてください。
参列者の方々が訪れる前に行われる納棺の儀式は、ご遺族の方と故人が一緒に過ごせる最後の時間になるかもしれません。
納棺の豆知識:ひとつひとつを丁寧に行う。
実際に納棺を経験するのは多くても生涯で数回程度ではないでしょうか。
大切な人が亡くなったという悲しみが漂う中、様々なことは目の前を通り過ぎるようにして、いわば事務的に行われていくように喪主の家族には映るかもしれません。頭ではそれが理解できていてもやはりうまく気持ちがついていかないものです。しかし、故人の方にきちんと触れられるのはこの納棺の義が実質最後になると言っても過言ではありません。その時間を丁寧に過ごすことで、自分自身の癒やしにつながることもありますし、残されたご遺族の絆を深める場にもなります。
故人との思い出を語って子や孫に聞かせたり、どれだけ大切に思っていたかを隠すことなく表現したりすることは決して恥ずかしいことではありません。どうかご自分で感じていることを素直に表現してみてください。子供やパートナーがいらっしゃる前で声を上げて泣くのはみっともないという方もいらっしゃるかもしれませんが、あなたの身近な人はその涙で一生に浄化されたり、感情表現自体を理解したりするものです。
故人が身につけるものをひとつひとつ丁寧に着せていくこと、あちらの世界でもきちんと迷うことなく成仏されることを願って頭陀袋を渡すこと、感謝の気持ちを込めて愛用品を納めること。これらの所作になにかしらの思いを込めることで、喪主のご家族自身にも気持ちの整理が少なからず進むかもしれません。どのようなときにも丁寧な所作を心がけたいものですね。