友引人形とは?
共人形。いちまさん。友引に葬儀を行う際、死者と共に棺に入れる人形のことを指して、友引人形と言います。
昔から友引に葬儀を行うことは、亡くなった人が生きているほかの誰かを、ともに引く、つまり死者の世界へと連れていってしまうと、忌み嫌われてきました。これは陰陽道(おんようどう)によって伝えられてきたもので、友引の方角には友に災いがおよぶものとして吉凶の意味がありました。それがいつの日か六曜の、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口のうちのひとつで、勝負が決まらない日とか良くも悪くもない日とか言われてきた友引という言葉と結合し、葬儀では友を連れていってしまう日として、忌み嫌われる言葉となったようです。
現代ではそのような迷信に惑わされる人も減ってきてはいるようですし、また都心部で問題となっている火葬場の事情などにより、なかなか吉凶の日にちを選んでの葬儀が難しくなってきています。そのために友引だからといって葬儀を避けられず、やむなく行うこともしばしばであるというのが現状です。ただやはりそうは言っても、友を連れていかれるかも知れないという見えない精神的な負担を感じる人も多く、そんな場合に、この友引人形を身代わりとして利用することが風習としてあるのです。
友引人形は特に関西地方などの風習でよく行われてきました。
友引人形の豆知識:いちまさん
いちまさんというのは、市松人形のことで、京阪神地区では、親しみをこめてそう呼ばれています。
市松人形は、江戸時代中期の頃に子どもたちが遊ぶための着せ替え人形のおもちゃとして作られたものでした。裸の状態で売られ、購入した人がそれぞれに手作りした衣装を着せて遊ぶというものです。また衣装を作るための裁縫の練習台としても使われていました。市松という名前の由来はいくつかあって、当時、市松という名前の子供が多かったからだとか、市松模様の着物を着せていたからだとか、はっきりとした確かなものはないようです。
現在では着せ替え人形として遊ぶものではなく、ひな祭りの節句や端午の節句などに観賞用として飾られるものとして利用されることが多くなりました。
市松人形は日本人形のことを指していいますが、京阪神地区では人形全般のことをいちまさんと呼ぶ傾向にありました。亡くなった人が寂しくないように人形を棺に入れて、またそのいちまさんを自分たちの身代わりとしたのではないかと考えられています。なんでも擬人化させて親しむことが得意な関西人だからこそ、広まっていった風習なのかも知れません。