手元供養とは?
手元供養とは、寺院などに遺骨を納めるかわりに、遺骨または遺灰を自宅で保管する形の供養を言います。遺骨をどのように扱うかで大きく分類され、遺骨や遺灰をそのまま骨壺などに入れ供養する「納骨型」、ダイヤモンドや陶器などに加工する「加工型」、もう一つはロケット型のペンダントやリングなど、遺灰をそのまま入れられるアクセサリーとして身に着ける3種類の方法があります。
手元供養が広まった理由は、宗教観や死生観の変化などが挙げられますが、「お墓を買うお金や土地がない」「仏壇を置けない」といった現実的な問題もあるようです。また近年ではお墓を管理する家族がおらず「墓じまい」をする家もあります。そういった背景と、故人と一緒にいたい・暗いお墓の中に閉じ込めるのはかわいそう……といった遺族の心情が合致したものが手元供養です。
手元供養は骨壺やアクセサリーなど遺骨を何らかの形にしていることから、お参りできる対象が身近に感じられるのが特徴です。また従来型の仏壇のかわりに、テーブルの上に置ける大きさの飾り台などもあります。飾り台に限らず手元供養の品には宗教色のない現代的でシンプルなデザインが多く、木材の温かみを生かしたものやガラスの蝋燭立てなど、インテリア感覚で日常に馴染むのも最近の傾向です。
例えばペンダントだけなら1万円程度から揃えられる価格面などのメリットもありますが、供養をする人が亡くなってからも故人と一緒にいられるよう火葬に適した素材の品もあり、多様なライフスタイルに適応できるのが手元供養の良い所です。ちなみに手元供養という名称は「NPO手元供養協会」という法人の会長が名付けたものであり、現在も同会では手元供養の普及・啓蒙活動を行っています。
手元供養の豆知識:位牌にしてしまうと、遺骨は抜け殻?
何らかの事情で、これまで手元供養していた遺骨をお墓に納骨し位牌を置くことがあると思います。「位牌は故人の魂を入れる儀式があるので、それが終わったら遺骨にはもう魂が入っていない」と聞いたことがあります。また古くから「四十九日までに位牌を作らなければならない」と言われていましたが、手元供養という新しい形式での供養をしていた場合、これを気にする必要があるのでしょうか?
そもそも位牌は中国から伝わった文化です。「木簡」と呼ばれた板に先祖の名前を書いて家などに祀ったのが始まりとされています。これは肉親や目上の人を敬う儒教の概念から来ているようです。日本では鎌倉時代のころから禅宗の僧侶を中心に位牌が広まりましたが、現代のように仏壇に位牌をおくようになったのは江戸時代になってからとのことです。
確かに仏教ならではのしきたりはありますが、位牌は元来、今生きている人間と「あの世」にいる先祖の魂を結ぶ通信塔のようなものだったとも言われています。そういった意味があるのなら、なおさら供養の形にこだわる必要はないのかも知れません。