前編では「坊主BAR四谷」にて家族葬の増加とお坊さんが葬儀で果たす役割を中心に、お話を聞きましたが今回も引き続き田口弘願さんにお付き合い頂き、お話を伺います。
質問4:「戒名をつけずにお葬式って出来ないんですか?」
「うーんと、そもそも何で死んだ人に戒名をつけるかっていうと、お坊さんは仏門に入ってる人しか葬式やっちゃいけないからね。だから後からなんだけど、戒名をつけて仏弟子になってもらうわけよ」(浄土真宗大谷派僧侶・田口弘願さん)
戒名とは元々出家した人がその証に頂く名前らしいです。だから仏教徒であればその名を持っています。ところが多くの日本人は出家してないのに仏教式のお葬式を挙げようとします。ただし仏教では仏弟子以外の葬式は出来ないので、臨終の際に仏門に入ってもらうという意味で戒名を授ける、というのが現行の論理だと思います。
死後に戒名をつけるのは日本だけの風習だと言います。そのことへの批判も多いですが、そもそも仏教徒ではないのに仏教式のお葬式を挙げるという矛盾点が、戒名の問題に集約されているように思えます。せっかくなので、もうちょっと踏み込んでみました。
質問5:「その日初めて会うお坊さんに戒名つけられても、あんま有難味ない気がするんですけど」
「お坊さんも初めて会う人に名前つけるの勇気いるよね。だからなるべく生前につけるようにして下さいって出来るだけ言ってるんだけどね。日常的に色んなお寺を訪ねて、自分はここでお葬式してもらいたいなって所を探すのはどうですか、て僕は言ってる訳よ。最近はお寺でも住職と語る会とか仏教を語る会とか、いわばオープンキャンパスみたいな形で檀家さんじゃなくてもどうぞ来てくださいって開いてるから。そういうとこ行くと仏教の教えとか住職の人となりとかわかるから、ここいいなってとこと付き合えばいいし」(浄土真宗大谷派僧侶・田口弘願さん)
かかりつけのお医者さんを見つけるみたいな感じだろうか。
「そうそうそうそう! 行きつけの飲み屋だって探さないと見つからないしね。行き当たりばったりでは良い店当たらないよ、と。お坊さんも一生懸命やってるけど、合う合わないあるからね」(浄土真宗大谷派僧侶・田口弘願さん)
宗教者に対しての敷居は下がってきています
近年お坊さんと会うという敷居は下がっているでしょう。現に坊主BARのようなバーやカフェを出すお坊さんもいますし、一般の方に坐禅会や写経会を開いているお寺も多いです。
ちなみにこの日は水曜日だったのですが、毎週水曜日は坐禅会をお店の上で開催しているらしく、若い女性2人が相次いで2組も坐禅をするためお店を訪れていたので、お坊さんと関わる機会は、仏教文化を知るという目的でも現在増えています。
最後にマスターである浄土真宗本願寺派・藤岡善信さんに、お葬式以外のところでお坊さんと一般の方との関わりについてお話しを聞きしました。
質問6:「近年お葬式やお寺以外でのお坊さんの活動が目立っています。それはなぜだと思いますか?」
「一般の人が何を求めているかに耳を傾けてみると、気軽にお坊さんの話を聞いてみたい、坐禅とか興味あるけどお寺だと堅苦しくて行きにくいという声が聞こえますね。だからそういうニーズに着目して動いているんだと思います」(浄土真宗本願寺派・藤岡善信さん)
ということは、坐禅をする人が増えているということでしょうか。
「そうですね、若い人の層が増えてきましたね」(浄土真宗本願寺派・藤岡善信さん)
若い人は何を求めて坐禅してるのでしょうか。
「癒し、じゃないですかね。雑念であったり日々溜まってる心の垢を流してすっきりしたいっていう気持ちからだと思います」(浄土真宗本願寺派・藤岡善信さん)
仏教ブームというものを感じたりするのでしょうか。
「はい。まだ皆さん入口に留まっている状態ですが、最初はそれでいいと思います。仏教の奥に何かあるんじゃないか、という直感が働いているんだと思いますし。拠り所が無くなってる時代ですからね」(浄土真宗本願寺派・藤岡善信さん)
ちなみに開店当初よりお客さんは増えているのでしょうか。
「増えてますよ、大体8倍くらい。ちょっと言い過ぎたかもしれない(笑)」(浄土真宗本願寺派・藤岡善信さん)
取材を終えての感想
取材を終え、お店オリジナルカクテルである「極楽浄土」を頼みました。3層に分かれたロングカクテルは見た目にも美しく、マンゴーの甘味が飲みやすいまさに極楽な一品でした。
3人の僧侶と気軽にお話をさせて頂き、有難かったし何より楽しかったです。お葬式の時だけお坊さんと関わるというのは、もったいない気がしてきました。
皆さんも何か話を聞いてもらいたい時、その相手としてお坊さんという方達を選択支に入れてみるのはいかがでしょうか。