菊の花とは?
菊はイエギクと呼ばれるキク科キク属の植物の総称です。日本の和菊、ヨーロッパの洋菊の大きくふたつに分かれることができ、それぞれにたくさんの種類や品種があります。
日本に菊が入ってきたのは8~9世紀ごろと言われ、平安時代の上流階級の貴族に親しまれていたようです。それは平安時代に編纂された『古今和歌集』の和歌に初めて菊が登場して以来、度々詠まれるようになったことから明らかです。そして鎌倉時代に後鳥羽上皇が菊の花をモチーフにした「菊紋」を皇室の家紋としました。
春の花の代表である桜に対して、秋の花の代表としての菊の花は、桜とともに日本を象徴する花でもあります。
また品種や色など種類の多いことや、その姿の美しさ、そしてどのような環境でも強く育てやすく、アレンジメントや鉢植えなど私たちの生活においてどのような状況も選ぶことなく利用することができることも、人気のひとつと言えます。
その菊はまた葬儀の花としても、日本ではよく知られています。そのため縁起の悪い花であるという印象もあります。
しかしなぜ葬儀などには菊がよく使われるのでしょうか。これには諸説あるようです。やはり皇室の紋であるということも理由のひとつかも知れません。高貴な花をふんだんに使用して、亡くなった人の魂を供養したいという遺族の願いでもあるのでしょう。また菊は香りが良く、お香と同じ役割を果たすことができるとされています。自然で優しい菊の花の香りで、残された人々も癒されるのではないでしょうか。
それに菊の花は食することもできます。菊の花を身体に入れることで、身体を浄化する効果があり、長生きできるという逸話も信じられていて、参列した人々の健康祈願によって始まったのではないかという説もあります。
特に白い菊がよく使われるのは、最近でこそ葬儀は黒であるというイメージが定着していますが、これは西洋文化の影響とされており、本来日本では白が葬儀の色とされていました。穢れのない真っ白で神聖な世界への旅立ちという意味が込められていたのです。白い菊で装飾するのは、これらの名残りであると考えられます。
最近は好みもバラバラで菊の花にこだわらず、亡くなった人が好きだった花で装飾する葬儀も増えてきているようです。色も白や黄ばかりでなく、パステルカラーの華やかで優しい色のセレモニーが多くなってきています。
菊の花の豆知識:重陽の節句
五節句のひとつに重陽の節句というものがあります。これは陰暦の九月九日に行われるもので、別名を菊の節句とも言います。現在は他の節句と比べて行われることがほとんど無くなってしまい、知っている人も少なくなってしまいました。
以前はこの日になると、宴の席を設けて、お酒に菊の花びらを浮かべて飲んだりしました。これはもともと中国で行われていたもので「登高」と言われていました。この日になると、丘などの高いところに登って、菊の花の入ったお酒を飲むと災いが消えるという儀式があったそうです。