和型墓石とは?
和型墓石とは、江戸時代から存在すると言われている、日本では一般的な形状の墓石です。土台となる芝台(下台石)を一番下に、中台石、上台石と上方に従って底面積の小さい石を重ね、一番上に竿石(棹石)という石を乗せる4段構造のものが多いようですが、芝台のない和型墓石もあります。竿石には家紋や家名、埋葬されている故人の名や没年、享年や戒名などが書かれることがほとんどです。また、付属品として花立てや水鉢、香炉といったものがついています。近年は香炉の下などに、線香やライターなど墓参り用品の収納庫が設けられている和型墓石や、車いすのまま墓参できるバリアフリーのものもあります。
和型墓石には、宗派や地方によって形状やサイズの違いがあります。和型墓石のサイズは竿石の大きさで決まります。竿石の幅が24センチのものを「八寸角」、27センチのものを「九寸角」と呼びますが、30センチのものは「尺角」です。全国的には九寸角が多いようですが、関西では八寸角がよく選ばれます。関西では骨上げの際に一部のお骨しか拾わない風習が残っているため、納める骨壺のサイズが小さいことに理由があるようです。
また同じ形状の和型墓石でも、人口の多い土地ではスペースが足りないことから小型化していることがあります。その他、付属品や竿石に刻まれる文字などは宗派によって異なるものがあるので、専門の業者や菩提寺などによく確認することが必要です。
和型墓石は竿石のサイズによって、支える上台石や中台石、芝石の大きさも当然大きくなります。それに従って価格も高くなります。一般的な和型墓石は160万円から200万円が相場、安いものでも70万円ほどかかりますが、価格は使われる石や付属品、名入れなどの「オプション」によっても異なります。また石材は中国産の御影石がよく使われますが、希望によって日本産の花こう岩や、緑がかったフィンランド産の石材などを選べることがあります。
和型墓石の豆知識:お墓なのに「おめでたい」ってどういうこと?
和型墓石の由来は、インドの仏舎利塔にあると言われています。お釈迦様の遺骨を納める「ストゥーパ」の様式で建てられた仏舎利塔の形を模したものが、和型墓石の原型だそうです。ところでこのストゥーパ、サンスクリット語では「塚」や「塔」といった高く積み重ねたものの意味がありますが、一方で「福縁」といったおめでたい意味もあるそうです。
「おめでたい」のは言葉だけの意味ではありません。ストゥーパを建ててお釈迦様を祭ることで、亡くなった故人たちが仏の道を進むことができる。だからお墓を建てることも本来はおめでたいことなのだ、という考えも込められているようです。特に真言宗では、お墓は宇宙の真理や仏そのものを表すものとして重要視されています。真言宗で信仰されている大日如来は、宇宙や時間などを超越した存在だと言われています。また、和型墓石の原型であるストゥーパや五輪塔などは、空、風、水、火、地といった宇宙の要素を表したものだそうです。そういった背景から、お墓を建てることは仏の化身が現れることであり、故人に手を合わせることで供養にもなり、安らぎをもたらすものだと思われているようです。ですからお墓を建てることはおめでたい、と言われているのです。
実際に、古代から中国では生前にお墓を建てると縁起がいいと言われてきました。「寿陵」といって、現代では日本でも生前にお墓を建てる人が増えているようです。自分の好きな石材や、デザインのお墓を選べる、生前に自分の意思を伝えられるなど、寿陵のメリットは多々あります。現代では和型墓石でも色々な設計ができるので、元気なうちに考えておくのも良いでしょう。