末期の水とは？
末期の水とは臨終直後に亡くなった人の口元を水で潤すことです。「死に水をとる」というのも同じ意味で使います。遺族で血縁の深い順から 枕元に寄って行います。
末期の水の手順ですが、基本的には全てを遺族が行います。病院または自宅にて 医師から死亡宣告を受けたのち、あるいは 遺体が病院から故人の自宅へ戻ってきてから、湯灌や死化粧の前に行います。
病院で医師や看護師が 遺族の代わりに行う場合もあります。末期の水も地域によって その手順に多少差がありますが、一般的には以下のような流れで行われます。
１．箸の先に脱脂綿やガーゼを 白い糸で固定する
現代では割り箸を用いることが多いようです。地域によっては、箸ではなく新品の筆を用いることもあります。また 脱脂綿やガーゼの代わりには、シキミや菊の葉といった植物、あるいは鳥の羽を使うこともあるようです。
２．お椀や桶に水を汲んでおき、箸先の脱脂綿をつけて湿らせる
生前愛用していたお茶碗を用いるのも一般的です。
３．血縁の深い順に故人の唇に当て、唇を湿らせる
喪主から順番に故人の唇を湿らせます。基本的には、喪主または配偶者→故人の子→親→兄弟姉妹→子の配偶者→孫･･･といったように、血縁の深い順に行っていきます。
４．終わったらその後の手順に沿って 湯灌や死化粧を行う
末期の水を終えたのちには 湯灌、死化粧などの作業を行います。それらの作業に入る前に、故人のおでこや頬、花などを拭いてあげると良いでしょう。
末期の水の豆知識：末期の水の由来はお釈迦様の入滅
末期の水をはじめてとったのはお釈迦様です。仏典『長阿含経』に、末期の水にまつわる話が載っています。
自分の最期を悟った仏陀は、口の渇きを覚え 弟子である阿難に「水を持ってきてほしい」と頼みます。近くにあった川は濁ってとても飲めるものではなかったために、阿難は我慢するよう仏陀に言いますが、仏陀は三度水を求めます。飲み水を用意できない阿難が困っていると、雪山に住む鬼神が 鉢に澄んだ水を汲んで、仏陀に捧げたといった伝承が残されています。これが末期の水の由来であるとされています。
このエピソードの解釈の一つに、仏教ではあの世へ旅立った後には飲食が出来なくなるという思想があることから、「死者が喉の渇きに苦しまないように」、つまり、「死者があの世でも安らかに過ごせるように」という願いがもとになっている、というものがあります。
また、鬼神が水を差し出したという行動について、「死者の魂を呼び止めて蘇生させようとする、『魂呼び』としての呪術的な儀礼である」とする説、「この世に魂を繋ぎとめようとする意思の現れた行動である」とする説なども知られています。
いずれにせよ、末期の水は故人を偲び、その死を悲しむという遺族の思いの現れた風習であるのです。
